日本公衆衛生雑誌
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病院職員に対するインフルエンザワクチン接種の効果とその問題点
原田 博子小林 敏生若本 ゆかり瀧田 覚杉山 真一國次 一郎奥田 昌之芳原 達也
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2003 年 50 巻 6 号 p. 547-552

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抄録

目的 冬季におけるインフルエンザワクチン(以後ワクチンと略す)接種者と非接種者の発熱状況を把握し,2 つのグループを比較することによってワクチン接種の効果を相対危険で評価する。さらに予防接種を実施したグループに対し,接種後の副反応が次年度の保健行動にどの様に影響するか検討する。
対象と方法 調査病院において院内感染を予防するためにワクチン接種することが望ましいことを説明し,同意を得てワクチン接種を実施した病院職員185人と同市内の市役所職員のうちワクチン非接種の者450人に対して,アンケート調査を実施した。調査期間中に感冒様症状があった者を38.5度以上の発熱(インフルエンザ様症状)と38.5度未満の発熱(普通感冒症状)に分けてワクチン接種の効果を検討した。さらに病院職員にはワクチン接種後の副反応の有無および副反応の有無が今後のワクチン接種希望の有無にどの様に影響するか調査した。
結果と考察 38.5度以上の発熱は,ワクチン接種者では13.2%,非接種者では33.2%であり,ワクチン接種者で有意に低かった(P<0.01)。これに対して,38.5度未満の発熱の発症回数は,ワクチン接種者と非接種者の間には有意差を認めなかった。ワクチン接種後の副反応については,調査回答者159人のうち10%(16人)に副反応を認めた。今後のワクチン接種希望の有無について副反応の有無に分けて集計した結果,副反応があった者については,「ワクチン接種希望あり」が25.0%,「ワクチン接種希望無し」が50.0%であったのに対して,副反応が無かった者については,「ワクチン接種希望あり」は86.0%,「ワクチン接種希望無し」は,9.1%であった。ワクチン接種後に副反応を認めた者は,今後のワクチン接種希望の割合が有意に低かった(P<0.01)。
結論 ワクチン接種を受けた病院職員と受けていない市役所職員に対して,発熱出現の比較により予防接種の効果を検討した結果,ワクチン接種による38.5度以上の発熱の相対危険は,0.4であった。また,接種者は来年度も予防接種を希望する者が多かったが,副反応があった場合には予防接種を希望する者は少なく,さらに副反応が無くても予防接種を希望しない者を認めた。

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© 2003 日本公衆衛生学会
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