日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
地域における老年期痴呆の早期発見・早期対応システムの構築にむけての取り組み
藤原 佳典天野 秀紀森 節子渡辺 修一郎熊谷 修吉田 祐子金 貞任高林 幸司吉田 裕人石原 美由紀江口 夫佐子布施 寿美江森田 昌宏永井 博子新開 省二
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2003 年 50 巻 8 号 p. 739-748

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抄録
目的 地域在宅高齢者における認知機能低下者をスクリーニングし,専門医療機関への受診と地域ケアに結びつけるシステムを構築しつつある我々の取り組みを紹介し,その過程で明らかとなった課題をまとめることである。
方法 新潟県与板町在住の65歳以上全高齢者1,673人を対象に,2000年11月に簡易認知機能検査 Mini Mental State Examination (MMSE)を含む面接調査を実施した(第一次調査)。1,527人(91.3%)が応答し,MMSE 得点の年齢別の平均点−1 SD 以下を認知機能低下群(371人)とした。1 年後に入院・入所中,死亡等を除く332人に対し二次調査の案内を発送し,希望者158人(42.5%)に対し,2001年11月に訪問面接を実施した(第二次調査)。本人には再度 MMSE 等を実施すると共に,家族からの聞き取りをもとに Clinical Dementia Rating (CDR)を用いて痴呆の重症度を評価した。その結果,MMSE 得点が二次調査でも年齢階級別平均−1 SD 以下であった者,又は CDR≧0.5を満たす者に対して,専門医への受診を勧奨した(三次調査)。
結果 二次調査非希望者は受検者に比べ一次調査での MMSE 得点は有意に高く,年齢は有意に低かった。非希望の理由は「物忘れに対する不安がない」が最多であった。三次調査の該当者(96人)のうち,非希望者(47人)は希望者に比べて二次調査の成績に有意差はみられなかったが,高年齢かつ MMSE が低得点の者や,低年齢で MMSE が高得点の者が多い傾向がみられた。三次調査を受検した45人の診断はアルツハイマー型老年期痴呆22人,脳血管性痴呆13人,パーキンソン病等 5 人,異常なし 5 人であった。なお,これらの取り組みの過程においては,住民に対して痴呆に関する健康講座を開き(計26回),その普及啓発につとめるとともに,地元かかりつけ医や関連機関との連携,さらには痴呆予防教室,ミニ・デイケア(町内 8 ケ所)といった地域ケアシステムの整備を進めてきた。
結論 地域における老年期痴呆の早期発見・早期対応システムを構築する上で,低年齢で認知機能が軽度低下している者への普及啓発が特に重要である。また,事前の普及啓発や地域高齢者に対する認知機能検査のあり方,さらには経過観察群に対する地域ケアシステムの整備といった課題が再確認された。
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© 2003 日本公衆衛生学会
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