日本公衆衛生雑誌
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医師・歯科医師・薬剤師調査の個票データを使用した届出率の推計
島田 直樹近藤 健文
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2004 年 51 巻 2 号 p. 117-132

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抄録

目的 医師・歯科医師・薬剤師調査(三師調査)には届出漏れが存在することが知られているが,その実態は明らかではない。そこで本研究では,三師調査の個票データを使用して,医師,歯科医師および薬剤師の届出率を推計した。
方法 届出率を推計する場合,厚生労働省への登録年ごとに(ある調査年に三師調査へ届出を行った者の数)/(その登録年における医籍,歯科医籍または薬剤師名簿への登録者数)を計算して届出率とする方法が考えられるが,この方法では生存率が補正されない。そこで本研究では,1955年以降の登録者を対象として,1982年から2000年までの三師調査について生存率を補正しない届出率を推計するとともに,2000年の三師調査について,登録時平均年齢と過去の国勢調査結果を用いて登録年ごとの生存率を推定して,その生存率で補正した届出率を推計し,生存率を補正しない届出率との比較検討を行った。
成績 2000年の三師調査において,生存率を補正しない届出率は医師87.08%,歯科医師84.98%,薬剤師71.58%であり,薬剤師の届出率は医師,歯科医師に比較して低かった。また,生存率を補正した届出率は医師90.30%,歯科医師87.15%,薬剤師72.98%であり,いずれも生存率を補正しない届出率より高くなったが,薬剤師は医師,歯科医師に比較して変化が少なかった。登録年ごとにみた生存率を補正しない届出率と補正した届出率の比較では,登録年が古くなるにつれて両者の違いが大きくなる傾向があったが,薬剤師は医師,歯科医師に比較して違いが小さかった。生存率を補正した届出率において2000年から登録年をさかのぼる際の推移をみると,医師,歯科医師では,一時的な低下以外は1965年前後まで90%以上の届出率を維持していたが,薬剤師では登録年をさかのぼるにつれて届出率が低下する傾向にあった。
 このような医師,歯科医師と薬剤師との違いの理由として,薬剤師では医師,歯科医師に比較して,1) 女性が多い,2) 生存率が高い,3) 登録時平均年齢が若い,ことが考えられたが,それ以外に,医師,歯科医師と薬剤師の間で卒業後の就業状況ならびに三師調査に対する認識が異なっている可能性も考えられた。
結論 本研究により,医師,歯科医師および薬剤師の届出率の特徴が把握された。

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© 2004 日本公衆衛生学会
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