抄録
目的 わが国では入浴時の死亡事故が多く,その85%以上が高齢者である。入浴時の室温が入浴者の循環動態に与える影響に関する研究の多くは比較的低い室温に注目しており,また高齢者を対象とした研究は少ない。本研究では,高齢者において比較的高い温度帯での浴室温が入浴時の循環動態に及ぼす影響を明らかにするために,20℃および27℃の 2 つの室温を選び,これらの室温が湯温41℃における入浴時の循環動態および入浴時の気分等に与える影響を検討した。
対象と方法 重症な呼吸・循環器疾患を合併していない自立高齢者14人(男性 6 人,女性 8 人,平均年齢70歳)を対象に,20℃と27℃の 2 つの室温のもとで41℃の中温浴を合計 2 回してもらった。どちらの室温条件で入浴してもらうかの順序は無作為に割付けた。入浴中および入浴後安静臥床時の血圧,脈拍,pressure-rate product(PRP,収縮期血圧値と心拍数の積),酸素飽和度,鼓膜温,気分(FS)および温度感覚(RTS)を計測し,これらの経時的変化を 2 つの室温の間で比較した。
結果 1) 室温27℃では20℃に比べて,鼓膜温の上昇がより顕著で,入浴後の血圧低下が大きかった(P<0.05)。
2) 室温27℃と20℃との間では入浴中および入浴後の気分の変動には有意な差がなかった(P>0.05)。
3) 室温27℃では室温20℃に比べて,出浴後に酸素飽和度が低い傾向があった(P<0.05)。
考察 健常高齢者においては,室温20℃, 27℃の入浴はともに安全な入浴と考えられた。室温27℃ の入浴の方がより好ましい血圧降下作用を得ることができると考えられた。