日本公衆衛生雑誌
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原著
職場環境がコンピュータ技術者の精神的健康度および離職意向に及ぼす影響
富永 真己朝倉 隆司
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2006 年 53 巻 3 号 p. 196-207

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抄録
目的 国内の労働職場環境の変化によるストレスを先取りする典型的な産業・職場である情報関連・通信産業のコンピュータ技術職を対象に,労働職場環境のマクロとミクロのストレッサーと,精神的健康度および離職意向との関連性を,組織の収益性と個人要因である成長欲求度を含め明らかにし,組織の生産性と労働者のウェルビーングの両方を改善する方法の示唆を得ることを目的とした。
方法 国内の 2 つの情報関連産業の組合連合体を通じ,調査協力の承諾が得られた53社に対し,割当法を用い各社30人,計1,590人の組合員を対象に web 上の質問票調査を無記名形式で実施した。有効回答率は66%(53社,1,049人),うち約 8 割を占める技術職種を分析対象とした。分析には,基本属性,就業特性,労働時間特性,労働職場特性,組織の収益性,個人要因として Hackman と Oldham の成長欲求度の各項目と,労働職場環境特性の尺度を先行研究の概念モデルを参考にマクロとミクロのストレッサーに分類し用いた。精神的健康度と離職意向の尺度を従属変数として用い,階層的重回帰分析による関連性の検証を試みた。
成績 仕事の量・質的負荷は,精神的健康度および離職意向において重要な要因であった。また,マクロレベルのストレッサーが精神的健康度及び離職意向の増大に強く影響していた。さらに,労働職場環境特性以外に精神的健康度は成長欲求度が,離職意向は組織の収益性と精神的健康度が,重要な要因であった。
結論 労働職場環境特性と精神的健康度及び離職意向との関連性が明らかとなり,それらの対策が個人と組織に有益であることが示唆された。
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© 2006 日本公衆衛生学会
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