日本公衆衛生雑誌
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原著
血圧低下のための個別健康支援プログラムの効果に関する非無作為化比較試験 石川県小松市における国保ヘルスアップモデル事業
三浦 克之茗荷谷 弘子角谷 佳恵林 真紀本谷 雅美葛巻 美紀米田 みちる三井 外喜和西条 旨子森河 裕子中西 由美子中島 素子中川 秀昭
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2006 年 53 巻 8 号 p. 533-542

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抄録

目的 血圧低下のための個別健康支援の効果判定のため,従来の個別健康教育プログラムを基本とする支援プログラム,これにグループダイナミクスを取り入れた支援プログラム,さらに郵便等を用いた双方向の通信による支援プログラムを開発し,3 プログラムの介入効果評価のための非無作為化比較試験を行った。
方法 石川県小松市において検診の血圧が正常高値または軽症高血圧(収縮期血圧130-159 mmHg または拡張期血圧85-99 mmHg)であった20-69歳男女から参加者を募集した。参加者は個別面接による支援プログラム(個別面接支援群),グループによる支援プログラム(グループ支援群),双方向の通信による支援プログラム(通信支援群),および対照群から自由に選択して参加した。介入 3 群では個人の生活習慣の問題点に応じた行動科学的支援を月 1 回,6 か月間実施した。個別面接支援群134人,グループ支援群79人,通信支援群127人の 6 か月間の血圧の,対照群178人と比較しての実質的変化(および95%信頼区間)を性・年齢を調整して算出した。
成績 対照群と比較した実質的な収縮期血圧変化(介入群と対照群の血圧変化の差)はグループ支援群で最も大きく,性・年齢調整後の実質的変化は−6.5 mmHg(95%信頼区間−10.0, −3.0)であった。通信支援群でも収縮期血圧の実質的変化は有意であり−4.3 mmHg(95%信頼区間−7.3, −1.3)であった。個別面接支援群の実質的収縮期血圧変化は−2.5 mmHg(95%信頼区間−5.5, 0.5)にとどまった。男女別にみると,グループ支援群の女性の収縮期血圧低下が最も大きかった。男性の収縮期血圧低下は介入 3 群ともほぼ同程度で 4 mmHg 前後であった。また体重は介入 3 群とも平均 1 kg 以上低下した。
結論 非無作為化試験であるという限界があるが,個別健康教育プログラムにグループダイナミクスを加味した支援プログラムおよび双方向の通信による支援プログラムが,ともに正常高値血圧および軽症高血圧における血圧低下に有効である可能性が示唆された。男性では 3 つのプログラムで同様の効果を示したが,女性ではグループによる支援の効果が大きかった。

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© 2006 日本公衆衛生学会
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