日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
前期高齢者女性を対象とした地域での well-rounded training の試み
原田 直子榊原 久孝
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2007 年 54 巻 1 号 p. 15-24

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抄録

目的 レジスタンストレーニングと有酸素運動および柔軟性運動とを組み合わせた総合的な運動様式である well-rounded training は,高齢者の体力向上に有効であることが示されている。本研究は,地域で試みた下肢筋力増強を主目的にした地域在住の前期高齢者女性を対象とした well-rounded training の効果について検討した。
方法 研究対象者は,本研究の趣旨に同意の得られた岐阜県 E 市在住の前期高齢者の女性で,平成15年度と平成16年度に実施された地域 well-rounded training 教室のどちらかに参加した参加者24人と対照のレクリエーション教室の参加者15人であった。地域 well-rounded training 教室は,週 1 回ごとに12週間実施された。レクリエーション教室は,2 週間ごとに12週間実施された。各教室の開始時と 3 か月後の終了時に,質問紙調査,形態計測,体力測定などを実施した。
結果 地域 well-rounded training 教室群では,質問紙調査において「現在の体力に自信がありますか(P<0.01)」,「楽に歩ける距離はどのくらいですか(P<0.05)」,「普段どれくらい外出しますか(P<0.05)」などの項目で有意な改善がみられた。対照群では,有意な変化はみられなかった。体力などの項目では,両群ともに10 m 歩行,全身反応時間,椅子立ち上がり運動において効果がみられた。さらに地域 well-rounded training 教室群では,柔軟性の指標である長座体前屈(P<0.01)や CT で測定した大腿部筋横断面積(P<0.05)において効果が認められた。
結論 今回の地域における well-rounded training 教室の試みによって,well-rounded training が前期高齢者の下肢筋力の増強や柔軟性などの維持増進に寄与することが示唆された。急速な高齢化が進む中,高齢者を対象とした地域における well-rounded training program は益々重要になると考えられる。

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© 2007 日本公衆衛生学会
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