日本公衆衛生雑誌
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原著
双生児の「こころ」の発達 Twin language に対する介入の意義
林 知里早川 和生前田 知穂西原 玲子尾ノ井 美由紀
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2008 年 55 巻 10 号 p. 701-715

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抄録

目的 双生児は単胎児に比べてことばの発達が遅れることが報告されており,その原因として「双子だけで通じる独自のことば(以下 twin language とする)」が注目されている。本研究では,twin language と学童期における社会性の発達の関係を明らかにすることを目的とした。
方法 1999年にツインマザースクラブの会員の親2,733人に自記式質問紙を郵送,回答のあった1,428人(52%)への 5 年後の追跡調査として,2004年に追跡可能であった958人に自記式質問紙を郵送,516人から回答を得た(53.9%)。このうち,学童期(6 歳~12歳)の261組(522人)を分析対象とした。双生児の社会性については,「TS 式幼児・児童性格診断検査」を用いて評価した。
結果 双生児ペアのうち第 1 子と第 2 子では異なる結果となった。第 1 子では,「社会性」,「学校適応」,「家庭適応」の 3 領域の合計得点で判定される「社会的不安定」において有意な関係は認められなかった。一方,第 2 子については,出生時体重が2500 g 未満の児は2500 g 以上の児と比べて1.846倍(95%CI: 1.039-3.278, P<0.05),妊娠中に妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)と診断された母親から生まれた児はそうでない児と比べて1.903倍(95%CI: 1.044-3.467, P<0.05),twin language を話していた児は話さなかった児と比べて2.022倍(95%CI: 1.167-3.503, P<0.05)多かった。
結論 今回の調査により,乳幼児期の twin language が学童期の社会性の発達に関与することが明らかとなったため,乳幼児健診時における医師,保健師,心理職からのフォローアップ,保育園や幼稚園に通わせるなどで他の大人や子どもとの関係性を築く機会を多く作ること,双生児に対して個別的に関わる時間を多くもつように親に指導するなど,言語発達を促すための積極的な介入が必要であると考えられる。また,双生児の親の会などを組織的に活用し,双生児の親の子育てをサポートしていく必要がある。

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© 2008 日本公衆衛生学会
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