日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
資料
保健師によるソーシャルキャピタルの地区評価
埴淵 知哉村田 陽平市田 行信平井 寛近藤 克則
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 55 巻 10 号 p. 716-723

詳細
抄録

目的 市町村保健師による地区のソーシャルキャピタル(SC)の評価,および SC と健康との関連を明らかにする。
方法 A 県 B 地域の市町村保健師に対するアンケート調査(n=70)を実施し,各地区の①健康行動,②居住環境,③社会関係,④活動反応,⑤健康水準について,5 段階での評価を質問した。同地域の高齢者調査(n=17,269)における SC 指標との関係や地区評価の項目間の関連を,相関分析および重回帰分析にて検討した。
結果 二つの調査データの相関分析の結果,保健師調査の③社会関係と高齢者調査の「地域への愛着」(r=.425, P<0.01),「友人との面会」(r=.404, P<0.01),保健師調査の④活動反応と高齢者調査の「受領サポート」(r=.233, P<0.05)などの間に相関関係が確認され,保健師の地区評価がいくつかの性質の SC を捉えていることが示唆された。地区評価の⑤健康水準を被説明変数とした重回帰分析の結果,③社会関係や④活動反応といった SC が,地域の健康水準と関連して評価されていることが示された。また,ベテラン保健師(n=24,従事年数11年以上)は③社会関係を,若手保健師(n=46,従事年数10年以内)は④活動反応をそれぞれよく捉え,また健康水準とも関連して評価していた。
結論 保健師の地区評価がいくつかの性質の SC を捉え,SC が健康とも関連して評価されていた。保健師の地区評価や地域診断の重要性が SC 論の視点から示唆された。

著者関連情報
© 2008 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top