日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
原著
変形性膝関節症を有する高齢者を対象とした運動介入による地域保健プログラムの効果 無作為化比較試験による検討
種田 行男諸角 一記中村 信義北畠 義典塩澤 伸一郎佐藤 慎一郎三浦 久実子西 朗夫板倉 正弥
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 55 巻 4 号 p. 228-237

詳細
抄録

目的 変形性膝関節症(膝 OA)を有する高齢者を対象に,地域保健の現場で介護予防事業として実施できる運動介入プログラムを考案し,その効果を無作為化比較試験によって検討した。
方法 対象者は東京都武蔵野市保健推進課が開催した体操教室に自主的に参加した在宅自立高齢者88人(男性12人:平均年齢77.8歳±標準偏差5.4歳,女性76人:年齢73.2歳±5.3歳)であった。これらの対象者は介入群(44人)と対照群(44人)に無作為に割り付けた。介入群には 3 か月間を介入期間として,1 回あたり約90分間の運動教室を合計 8 回開催した。運動の内容は柔軟性運動(膝や足関節のストレッチ),筋力運動(大腿四頭筋の自発性収縮,ゴムバンドを用いた膝関節の伸展・屈曲),および動作訓練(寝返り,起居,歩行)であった。これらの運動を自宅で毎日実施するように指示した。Western Ontario and McMaster Universities OA Index (WOMAC 調査)による膝痛スコア,膝関節伸展および屈曲時のピークトルク,膝関節可動範囲(ROM),および生活体力(起居・歩行能力)が介入前後に測定された。
結果 介入前において,女性対照群の膝関節伸展時ピークトルク,起居能力,および歩行能力に有意差が認められた。反復測定分散分析を用いて時点と群の交互作用を検討した。その結果,膝痛スコア(P=0.031),膝関節伸展(P=0.016)・屈曲時(P=0.000)のピークトルク,ROM(P=0.037),起居能力(P=0.000)および歩行能力(P=0.000)に有意性が認められた。これらの効果量(effect size)は膝痛スコア0.44,膝関節伸展時ピークトルク0.23,膝関節屈曲時ピークトルク0.64, ROM 0.32,起居能力0.81,および歩行能力1.13であった。
結論 我々が考案した地域保健プログラムは,膝痛を有する高齢者の疼痛の軽減および運動機能の改善に有用であることが明らかになった。

著者関連情報
© 2008 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top