日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
青年期にある広汎性発達障害を持つ本人・家族の生活面の困難さに対する保健師の支援プロセス
塩川 幸子北村 久美子藤井 智子上田 敏彦
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2013 年 60 巻 11 号 p. 705-714

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抄録

目的 本研究は,青年期にある広汎性発達障害を持つ本人・家族の生活面の困難さに対する保健師の支援プロセスを明らかにすることを目的とした。
方法 対象は,保健師経験年数10年以上で,青年期の広汎性発達障害を持つ本人・家族の継続支援に携わる保健所保健師とした。保健師の支援事例は青年期にあり,ICD–10 の F84 広汎性発達障害と精神科医に診断された事例(疑い含む)とした。半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M–GTA)を用いて分析した。
結果 対象者は女性10人で保健師経験年数10~28年であり,保健師の支援事例は10事例,年齢22~37歳であった。分析の結果,38概念と14カテゴリーが生成された。青年期の広汎性発達障害を持つ本人・家族への保健師の支援プロセスは【困っていることに沿って一緒に考える】ことから始まっていた。【信用を生み出す】なかで,【生活面の困難さと本人の持つ特徴の影響を照らし合わせる】と同時に【本人の特徴理解】,【見立ての難しさと向き合う】ことを繰り返し【ふみこむタイミングや介入の判断】を行っていた。また,保健師は【地域の中でその人らしく生活できることを目指す】という目標に向かい,【わかりやすいコミュニケーションの工夫による対話の促進】を行いながら,【本人の特徴理解】をさらに深め,アセスメントと支援を連動していた。さらに,【自己理解の促し】から【自己決定・対処行動のサポート】へとつなげ,【地域資源の活用・開発】や【困っていることに沿った連携・調整】により支援を展開するとともに,【生活しやすい地域づくり】を目指し,継続支援を行っていた。
結論 保健師は,支援プロセスにおいて,広汎性発達障害を持つ人の特徴を見極め,信頼関係を重視しながら,わかりやすいコミュニケーションを工夫した生活支援や,関係者と連携して生活しやすい地域づくりを継続的に行っていた。保健師の役割として,生活面の多様な問題に対し,その人の特徴に合わせた対応策を共に考えて工夫するとともに,ライフステージに応じた本人・家族を支えるネットワークや地域全体の支援体制づくりを推進するプロセス全体を動かしていくことの必要性が示唆された。

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© 2013 日本公衆衛生学会
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