日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
看護職の眠気と職業性ストレスの関連
加藤 千津子嶋田 淳子林 邦彦
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2015 年 62 巻 9 号 p. 548-555

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抄録

目的 総合病院に勤務する看護職の眠気の実態を調査し,職業性ストレス簡易調査票を用い眠気に関連する要因を検討する。
方法 北海道の 5 つの総合病院に勤務する看護職1,997人を対象に,自記式調査票による横断調査を実施した。調査票は 1)属性,勤務状況および睡眠状況調査票,2)Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale(JESS),3)職業性ストレス簡易調査票を用いた。回答調査票が返送された926人のうち,調査項目に欠損値のない有効回答例837人(平均年齢±標準偏差36.0±10.1歳)を解析対象とした。
 統計解析は JMP8.02を用い,有意水準は 5%とした。
結果 837人の JESS の合計得点の平均値±標準偏差は10.9±4.3点であり,21~29歳は11.7±4.3点で30~39歳および50~59歳より有意に高い結果であった(P=0.021, P=0.006)。看護職経験年数においては,5 年未満は 5 年以上より有意に高く(P=0.002),交代勤務経験年数は有意差がなかった。JESS の合計得点が11点以上の日中の過度な眠気(Excessive Daytime Sleepiness:EDS)の有症割合は52.0%の高値であった。EDS の有無で職業性ストレス調査の得点を比較したところ,ストレス要因の心理的な仕事の質的負担,仕事のコントロール度,仕事の適性度,働きがい,ストレス反応の全項目(活気,イライラ感,疲労感,不安感,抑うつ感,身体愁訴),修飾要因の仕事や生活の満足度で,有意な差がみられた。EDS 有症との関連を検討した多重ロジスティック回帰分析では,職業性ストレス調査のストレス反応の疲労感,ストレス要因の職場環境によるストレスに有意な関連があった。
結論 看護職の眠気は強く,EDS の有症割合が52%と高く,とくに30歳未満の若年者,看護職経験年数が 5 年未満の看護職で JESS スコアが高いことが示唆された。職業性ストレスの関連では,ストレス反応の疲労感が有意に高く EDS との関連が示され,医療の安全上重要な問題であり,憂慮すべき状況であることが示唆された。

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© 2015 日本公衆衛生学会
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