日本公衆衛生雑誌
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中学生が持つ高齢者の生活に関するイメージと高齢者を支援する社会資源への関心の実態:「健康長寿都市」を目指す S 市を例として
小山 晶子濱本 洋子佐藤 鈴子
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2016 年 63 巻 6 号 p. 310-318

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抄録

目的 S 市の中学生を対象に高齢者の生活に関するイメージと,高齢者を支援する社会資源への関心について実態を明らかにし,中学生の高齢者理解に関する教育内容を検討するための資料を提供することを目的とした。
方法 S 市公立中学校の 2 年生967人を対象に,無記名の自記式質問紙による悉皆調査を行った。調査項目は,対象者の属性,高齢者の生活に関するイメージ,高齢者を支援する社会資源への関心を問うた。
結果 回収数555部(57.4%)のうち,490部(50.7%)を分析対象とした。祖父母と同居している者は158人(32.2%),祖父母との同居経験を持つ者は232人(47.3%)であった。同居経験を持つ者の大部分は,自立した生活を送る祖父母との同居であった。祖父母と会う頻度が週 1・2 回程度以上の者は303人(61.8%)であった。対象者の祖父母の平均年齢は72.2歳であり,「お年寄り」をイメージする平均年齢は71.3歳であった。高齢者の生活に関するイメージとして,加齢に伴う身体能力の低下が生じること,家族・友人と交流し,趣味や楽しみを持って生活したいと思っていることに対象者は同意を示した。祖父母と週 1・2 回程度以上会う者は,月 1・2 回程度以下の者よりも,元気な高齢者の生活をイメージしていた。高齢者を支援する社会資源については,「防災行政無線」,「送迎車」,「訪問看護」などを知っていた。また,男子よりも女子,祖父母と会う頻度が月 1・2 回程度以下の者よりも週 1・2 回程度以上の者が有意に多くの社会資源を知っていた。
結論 対象者は,高齢者の身体的加齢変化について一定のイメージを持っていたが,身体的加齢変化によって日常生活に困難が生じるイメージは持っていなかった。性別,祖父母との交流の頻度が,高齢者を支援する社会資源へ関心を持つ要因となる可能性が示唆された。

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