日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
保健所による保育園サーベイランスを活用した感染症集団発生の早期探知・介入の事例
松本 加代平山 千富佐久間 陽子糸井 陽一漁 亜沙美北村 淳子中橋 猛菅原 民枝大日 康史
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2016 年 63 巻 6 号 p. 325-331

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抄録

目的 保育施設に通園する乳幼児における感染症対策のためには,感染症流行の兆しを捉える早期探知が重要であり,またその情報に基づいてまん延防止対策を講じる必要がある。墨田区は感染症流行の早期探知と早期公衆衛生対応を可能にする保育園サーベイランスを平成25年 8 月より導入し保健所がリアルタイムに保育園内での流行状況を把握することで早期探知,積極的な早期の介入が可能となった。本研究は,システム導入後,保健所の感染症の早期探知とそれに基づく早期介入の事例をまとめ検討する。
方法 平成25年11月 1 日から平成27年 3 月31日までの期間に墨田区内の保育園サーベイランスを導入している保育施設62園を対象とした。
 保健所が何らかの理由で施設内の感染症流行を探知し,対応をした記録である観察データから保健所の探知理由と対応内容の分類を行った。探知理由の分類は,①従来通りの施設からの連絡,②保育園担当部署からの連絡,③保育園サーベイランスによる自動的な異常探知,④保育園サーベイランスを活用した職員による手動での確認,に分類して記録した。対応内容は,複数選択で11項目とした。
活動内容 探知理由は,平成25年度は 5 か月間で施設からの連絡 0 件,保育園担当部署からの連絡24件,保育園サーベイランスによる自動的な異常探知14件,保育園サーベイランスを活用した職員による手動での確認 7 件,計45件だった。平成26年度は 1 年間で,施設からの連絡 5 件,保育園担当部署からの連絡 7 件,保育園サーベイランスによる自動的な異常探知53件,保育園サーベイランスを活用した職員による手動での確認25件,計90件だった。システムによる探知が平成25年度47%,平成26年度87%と増加し,現在の探知理由の大半を占め早期探知が可能になった。対応内容は,発生状況確認や保護者への周知についての内容が多かった。
結論 保育園サーベイランスによる自動的な異常探知や同システムの手動での確認による探知ができるようになった。このシステムは,リアルタイムサーベイランスであり,感染症を保健所が把握するだけでなく,介入,まん延防止対策が迅速にとれることで,保育現場へ還元され感染症対策に活用されることができる。

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© 2016 日本公衆衛生学会
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