日本公衆衛生雑誌
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原著
急性期病院における後期高齢者の経済状況と退院先の関連:退院患者の調査票情報を用いた症例対照研究
佐方 信夫奥村 泰之白川 泰之
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2017 年 64 巻 6 号 p. 303-310

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抄録

目的 本研究では急性期病院を退院した後期高齢者の経済状況と退院先の関連を明らかにすることを目的とした。

方法 本研究は,厚生労働省の老人保健健康増進等事業として実施された調査の情報を二次利用することで,症例対照研究を実施した。調査では関東圏,関西圏の全急性期病院(1,092病院)に調査票の回答協力依頼が行われた。病院の退院調整を担当する職員に,退院先が自宅の者(以下,自宅退院)を直近2人分,退院先が自宅と異なる者(以下,施設入所等)の直近2人分について,調査票の回答が依頼された。調査票では経済状況を把握する項目として,「1か月に負担可能な金額」が質問された。この調査票の回答を自宅退院群と施設入所等群に分けて,患者背景を示す項目について記述統計量を求めた。また,従属変数を自宅退院,主な独立変数を経済状況として,自宅退院と施設入所等を医療機関でマッチングした条件付ロジスティック回帰分析を実施し,オッズ比と95%信頼区間を求めた。さらに,施設入所等群については経済状況別に退院先を集計し,退院先の施設類型に違いがあるかについて検討した。

結果 本研究の適格基準を満たした解析対象は565人(自宅退院293人,施設入所等272人)であった。条件付ロジスティック回帰分析の結果,自宅退院のオッズは,1か月に10万円以上~15万円未満負担可能な人と比べ,15万円以上負担可能な人では70%低いこと(OR: 0.29, 95% CI: 0.12-0.69),10万円未満の人では6倍高いこと(OR: 6.48, 95% CI: 2.50-16.79)が示された。また,施設入所等群のうち,1か月に負担可能な額が15万円以上の人では,介護付き有料老人ホームを選ぶ人が最も多く,10万円未満の人では特別養護老人ホームを選ぶ人が最も多かった。

結論 急性期病院からの後期高齢者の退院において,毎月負担可能な金額が少ない患者ほど自宅退院する可能性が高いことが示された。経済的にゆとりがないために自宅退院を選択している可能性が示唆されているため,国や地方自治体は,高齢者施設の確保や自宅での療養,介護,生活を支えるサービスの拡充を検討する必要がある。

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