日本公衆衛生雑誌
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公衆衛生活動報告
「シニアストレッチリーダー」養成講座プログラムの紹介と受講による効果について
城寳 佳也井上 大樹大藏 倫博
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2021 年 68 巻 5 号 p. 363-371

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抄録

目的 より多くの高齢者の運動実践を促すため,身体状況や体力レベルが大きく異なる高齢者に対応した運動プログラムを普及させる取り組みとして低強度運動であるストレッチングを指導できる高齢運動ボランティアを養成することとした。本稿では,茨城県つくばみらい市でおこなった「シニアストレッチリーダー(以下,SSL)養成講座」について,講座内容の紹介と受講による高齢者の身体機能,ストレッチング実践頻度への効果および講座終了後の活動について報告することとした。

方法 参加者は市の広報および回覧で募集した。養成講座は8週間,1回120分,全8回で構成した。講座では「SSL養成テキスト」を使用し,ストレッチング理論や高齢者への運動指導法を中心に講義をおこなった。実技はストレッチングフォームの確認やサークル指導のロールプレイングを中心におこなった。またグループディスカッションでは柔軟性が低下する要因や自宅でのストレッチング実践状況について5人1グループで話し合った。

 受講前後の身体機能の変化を評価するために,関節可動域(柔軟性),5回椅子立ち上がり時間(下肢筋力),開眼片脚立ち時間(静的バランス能力),10 m通常・最大歩行時間(歩行能力)の測定をおこなった。また,ストレッチング実践頻度の変化については,自記式アンケートと日誌を用いて評価をおこなった。その他,受講後に講座に関する評価をおこなった。

活動内容 第1回SSL養成講座には29人(男性15人,女性14人,平均年齢69.7±3.8歳)が参加し,全員がSSLとして認定された。受講後,柔軟性および歩行能力が向上し(P<0.05),ストレッチング実践頻度は有意に増加した(P<0.001)。講座に関する評価は,参加者全員が「有意義だった」と回答した。また,96.6%が「今後,サークル指導に携わりたい」と希望したことから,講座終了後,2つのサークルを設立し活動を始めている。

結論 講座の受講により柔軟性および歩行能力が向上し,ストレッチング実践頻度が増加したこと,またサークル指導に携わりたいと希望する者が多かったことはSSL養成講座の受講が高齢者の健康維持・増進に寄与する可能性がある。特別な道具を使用せず実施可能な低強度運動であるストレッチングを普及させるSSLの養成と活動を支援する取り組みは,他地域においても展開が可能であると考える。

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