日本公衆衛生雑誌
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原著
未治療陳旧性肺結核の潜在性結核感染症治療成績
小向 潤松本 健二工藤 新三大角 晃弘吉山 崇吉田 英樹下内 昭
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2021 年 68 巻 6 号 p. 405-411

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抄録

目的 大阪市西成区において未治療陳旧性肺結核に対しイソニアジド(以下INH)を投与し,副作用等により継続できない場合にリファンピシン(以下RFP)に変更した際の治療成績を明らかにする。

方法 対象の選択基準は,

①過去に1か月以上の結核治療歴がない,②胸部X線上,片肺の面積以内におさまる上中肺野にある線維化病巣(線状索状影または辺縁明瞭な結節影),③1年以上前の胸部X線の陰影と比べて変化がない,④クォンティフェロン® TBゴールド陽性

上記①~④を満たし,血液検査が基準値内であり,かつ活動性結核でないことを確認できた症例とした。aspartate aminotransferaseまたはalanine aminotransferaseが150 IU/L以上の場合,またはそれ以下でも肝障害による症状があればINHを中断し,その回復を待ってRFPを開始した。治療期間は,INH 180日,RFP 120日とした。

結果 症例は27例ですべて男性,平均年齢±標準偏差は68.4±6.6歳であった。INHを開始した27例のうち14例(51.9%)は,INHによる治療を完了した。治療中断した13例の中断理由は,9例(69.2%)が肝障害であった。肝障害でINH中断となった9例は,肝機能の回復後にRFPを開始し,RFP投与中に肝障害による中断はなかった。最終的な治療成績は27例のうち23例(85.2%)が治療完了(全治療期間INH投与14例およびINH服薬中断後RFP投与9例),4例が治療中断した。

結論 ホームレス・生活保護受給者が多く居住する地域での未治療陳旧性肺結核に対する潜在性結核感染症治療では,INHにより肝障害による中断を認めたが,RFPへの変更が治療完了率を高めることが示唆された。

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