日本公衆衛生雑誌
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原著
勤労者を対象とした男女別食事パターンの抽出と亜鉛摂取状況
田所 加奈南里 明子長野 真弓太田 雅規
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2024 年 71 巻 10 号 p. 615-623

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抄録

目的 亜鉛(Zn)は体内の必須微量元素であり,欠乏すると味覚,創傷治癒,免疫などに悪影響を及ぼすが,Zn欠乏症は気づかれにくいことが問題とされている。本研究では勤労者を対象として,因子分析により男女別に食事パターンを同定し,Zn摂取量との関連について明らかにすることを目的とした。

方法 参加者は九州北部の自治体職員で19~71歳,395人(男性193人,女性202人)を対象とした。生活習慣や健康に関する健康調査票と食品摂取データを得るための簡易型自記式食事歴法質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire:BDHQ)に回答してもらった。BDHQの結果を用いて52項目の食品および飲料の摂取量から因子分析を行い,男女別に食事パターンを同定した。Zn摂取量は密度法によりエネルギー調整を行い,1,000 kcal当たりのZn摂取量として評価した(mg/1,000 kcal)。Zn摂取量と各食事パターンとの関連については年齢,体格指数(body mass index:BMI),婚姻,職種,喫煙習慣,運動習慣で補正し,重回帰分析を行った。

結果 因子分析の結果,男性では,いも類,大豆製品,野菜類,魚介類,肉類で強い正の関連,穀類で負の関連が認められた「主菜・副菜型」と,菓子類やコーヒーが強く関連した「間食型」,パンやパスタ,魚介類,果物類,卵類,乳類で強い正の関連,みそ汁やめしで負の関連があった「地中海食型」の食事パターンが同定された。女性においては,大豆製品,野菜類,きのこ類,藻類が強く関連した「菜食型」,大豆製品,野菜類,果物類や魚介類等が強く関連した「主菜・副菜型」,アルコール類が関連した「晩酌型」の食事パターンが同定された。男性では「主菜・副菜型」と「地中海食型」が,女性では「菜食型」と「主菜・副菜型」でZn摂取量と正の関連が認められた。また,女性の「晩酌型」はZn摂取量と負の関連が認められた。

結論 勤労男性では「主菜・副菜型」と「地中海食型」が,勤労女性では「菜食型」と「主菜・副菜型」の食事パターンが年齢,BMI,婚姻状況,職種,喫煙習慣,運動習慣で調整してもZn摂取量と正の関連が認められ,これらの食事パターンを意識することはZn摂取量の確保につながることが示唆された。

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© 2024 日本公衆衛生学会
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