日本公衆衛生雑誌
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北海道における幼児の肥満および生活習慣と家庭・近隣環境との関連
高橋 彩華
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2024 年 71 巻 2 号 p. 108-116

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抄録

目的 本研究は,北海道における幼児の肥満および生活習慣と家庭・近隣環境との関連について明らかにし,北海道の環境特性を踏まえた幼児肥満対策への示唆を得ることを目的とした。

方法 北海道に居住する3歳から6歳までの未就学児1,786人の保護者に,無記名自記式質問紙調査を実施した。児の身長および体重の値,属性,家庭・近隣環境,生活習慣を尋ね,年齢別性別BMIカットオフ値以上を肥満とした。各変数と肥満との関連,家庭・近隣環境と生活習慣との関連について,それぞれ χ2検定を行った。

結果 有効回答950人(有効回答率53.2%)のうち,肥満児9.8%,睡眠時間が10時間未満の児50.9%,朝食欠食ありの児3.2%,間食時間が決まっていない児28.3%,テレビ視聴が2時間以上の児20.1%,ゲーム時間が1時間以上の児10.6%,体を動かす時間が1時間未満の児68.8%であった。χ2検定の結果,肥満と関連がみられたのは遊び場の有無(P<0.05),睡眠時間(P<0.01),ゲーム時間(P<0.05)であった。家庭・近隣環境と生活習慣との関連では,母親の就労が,間食時間(P<0.05),体を動かす時間(P<0.001),睡眠時間(P<0.001)に有意に関連していた。また,居住地域,遊び場の有無,一緒に遊ぶ友達が,体を動かす時間(P<0.01),睡眠時間(P<0.001,P<0.01)に有意に関連していた。

結論 幼児肥満の予防には,健康的な生活習慣の確立が重要である。本研究より,幼児の生活習慣に家庭・近隣環境が関連することが明らかになった。幼児肥満対策においては,個人や家族への支援に加え,地域の資源を活用した遊び場環境の整備など,地域の環境特性を踏まえた支援が重要であることが示唆された。

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