2025 年 72 巻 8 号 p. 566-576
目的 児童養護施設は,事情により保護者のもとで生活することのできない子どもの入所施設である。発災時には児童の養護を継続し,地域に貢献することが求められるため,業務継続計画(Business Continuity Plan; BCP)の策定が不可欠である。2023年4月より児童福祉施設のBCP策定が努力義務化されたが,社会福祉施設におけるBCPの策定状況は遅れている現状がある。本研究の目的は,児童養護施設におけるBCP策定を推進するため,児童養護施設におけるBCP策定に関連する要因を明らかにし,BCP策定支援の示唆を得ることである。
方法 全国児童福祉協議会に所属する579施設を対象に2023年4月から6月末に自記式質問紙調査を実施した。調査項目はBCP策定状況,児童養護施設の特性や災害関連経験,BCP策定担当者の特性,地域との連携協力体制とした。BCP策定状況と各項目との関連は,χ2検定またはFisherの正確確率検定で分析した。本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した。
結果 有効回答184部(有効回答率31.8%)を分析に用いた。BCP策定済みは76施設(41.3%),児童養護施設の入所定員は44.7±18.7人,回答施設の被災経験ありは45施設(24.5%),回答者のBCP策定経験ありは99施設(53.8%),福祉避難所開設事前準備ありは32施設(17.4%)であった。BCP策定状況と性別,BCP策定経験,BCP策定のための研修への参加経験,そしてBCP策定に対する支援希望に有意差を認めた。BCP策定意向と地域との連携協力体制との関係では,地域防災訓練への参加に有意差を認めた。
結論 児童養護施設におけるBCP策定状況は,性別,BCP策定経験,BCP策定のための研修への参加経験,そしてBCP策定に対する支援希望が関係していた。また,BCP策定意向は,BCP策定経験,BCP策定のための研修会の参加経験,地域防災訓練への参加が関係していた。児童養護施設でのBCP策定を促進するためは,BCP策定経験,BCP策定のための研修会の参加経験,地域防災訓練への参加を検討する必要がある。