日本公衆衛生雑誌
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習慣的な排便状況と便性状を評価する新しい質問票の再現性・内的妥当性の検討
大野 治美村上 晴香中潟 崇谷澤 薫平小西 可奈宮地 元彦
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論文ID: 20-037

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抄録

目的 ふん便(以下,便)は,我々の食事や栄養状態ならびに腸内細菌叢の特徴を反映し,身体の健康状態や栄養摂取状況を,簡便かつ非侵襲的に評価できるツールであると考えられる。一方で,便を包括的に評価し,簡便かつ客観的に評価する適切なツールに関する検討は十分に行われておらず,日常の排便状況や便性状を的確に把握できる有用な質問票が求められている。習慣的な排便状況(排便回数)や便性状(排便量,色,形状など)を把握するための評価ツールを作成し,排便日誌に基づく排便回数や便性状の記録と比較し内的妥当性を検討した。

方法 22から78歳までの成人男女35人(45.2±17.1歳)を解析対象とした。習慣的な便に関する質問票(以下,習慣的便質問票)による最近1か月間における平均的な排便回数,1回あたりの排便量,便の色や形状,便の浮きや腹部膨満感を調査した。この習慣的便質問票の各項目の再現性を検討するため,2回の調査を実施し,再現性を確認した。その後,排便日誌を用いて,毎日の排便時刻や便の性状などを1週間記録した。この排便日誌を基にした排便回数や便性状を内的妥当基準とし,習慣的便質問票により得られた回答を比較した。なお,習慣的便質問票における排便回数は,排便回数がカテゴリー化された回答を選択する選択回答法と数値による自由回答法の2種類で回答した。

結果 習慣的便質問票の再現性を検討した結果,全ての項目においてスピアマン順位相関係数の有意な相関(ρ=0.431~0.911)が認められ,重みづけκ係数においても高い一致度を示した(weighted κ=0.348~0.841)。また,内的妥当性については,排便日誌による1週間あたりの排便回数と,習慣的便質問票における排便回数の回答を比較すると,自由回答法による1週間あたりの排便回数の方が,選択回答法より高い相関(ρ=0.855)を示した。さらに,便性状については,1週間の排便日誌における便性状の回答の中央値と習慣的便質問票での回答との相関を検討したところ,「便の浮き」を除いて有意な相関が示された(ρ=0.429~0.800)。

結論 本研究で作成した質問票は,習慣的な排便状況や便性状を評価する上で,再現性と内的妥当性が高いことが確認された。

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