日本公衆衛生雑誌
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「改正・健康増進法」ならびに「兵庫県受動喫煙の防止等に関する条例」施行による病院の無煙化達成状況
濵田 昌範仲西 博子野原 秀晃清水 光恵今井 雅尚長江 利幸柳川 拓三柿本 裕一柳 尚夫須藤 章逢坂 悟郎鷲見 宏伊地 智昭浩田所 昌也鈴井 啓史廣田 理
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論文ID: 20-147

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抄録

目的 2019年7月の「改正・健康増進法」(以下,同法)施行に伴い兵庫県では「受動喫煙防止等に関する条例」(以下,同条例)が上乗せ施行された。具体的には精神科病院を除く病院(以下,一般病院)は全国に先んじ,「敷地内・建物内のすべてを禁煙。敷地の周囲も禁煙」(以下,無煙化),精神科病院は「施設管理者が治療のために必要と認めた」場合は屋外喫煙区域(以下,特例区域)を設けることができる運用になった。本調査の目的は,兵庫県下の病院における同法・同条例施行後の無煙化の達成状況と課題を明らかにすることである。

方法 兵庫県保健所長連絡会に所属する全保健所が病院立入検査対象病院の喫煙環境を調査した。同法・同条例の施行日以前に立入が完了した病院と,新型コロナウイルス感染拡大のため,やむなく立入りを来年度に延期した病院は質問紙による調査も可とした。調査項目は,全面禁煙であることの表示の状態,灰皿の有無,職員を受動喫煙から守る仕組みの有無等である。同法・同条例施行後に新たに生じた問題と精神科病院で治療のために喫煙が必要と施設管理者が認めた理由については自由記載とした。無煙化達成の判断は「全面禁煙を表示したうえで,敷地内と,その周囲にも灰皿が設置されていないこと」と定義した。

結果 神戸市と西宮市は所轄との調整がつかず計134か所の調査を見送った。残り15保健所管内の病院205か所を調査対象とした。調査した全病院のうち同法・同条例のもと,無煙化を達成した病院は195か所(95.1%),無煙化を達成した一般病院は178か所(97.3%)であった。精神科病院22か所のうち特例区域を設けた病院は4か所,残り18か所のうち無煙化を達成した病院は17か所(94.4%)であった。精神科病院で治療のために喫煙が必要と施設管理者が認めた理由は「禁煙にすると精神状態が悪化する」であった。一般病院と特例区域を設けなかった精神科病院での,無煙化に伴い新たに生じた問題点は「敷地外での喫煙に関する苦情」22件,「吸殻のポイ捨て」15件,「敷地内での隠れ喫煙」7件などであった。

結論 同条例は病院の無煙化を目指した画期的な条例である。同法・同条例の施行により,一般病院の無煙化はほぼ達成できている。精神科病院の無煙化も大きく前進した。

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