日本公衆衛生雑誌
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COVID-19流行下における食行動の変化,食物アクセスの課題,食情報のニーズ:世帯の経済状況別検討
赤岩 友紀林 芙美坂口 景子武見 ゆかり
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論文ID: 21-057

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抄録

目的 新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)流行下における世帯収入の変化の有無別に,コロナ前から緊急事態宣言期間中にかけての食行動の変化,緊急事態宣言期間中の食物へのアクセスの課題および食情報のニーズとの関連を明らかにすることを目的とした。

方法 2020年7月1~3日,13の特定警戒都道府県在住20~69歳男女を対象に,無記名のWeb調査を実施した。目標回答者数を2,000人とし,2020年2月より前(以下,コロナ前)から2020年4~5月の緊急事態宣言期間中にかけての食行動の変化と,緊急事態宣言期間中の食物へのアクセスの課題,食情報のニーズを尋ねた。有効回答者2,299人のうち,学生を除いた2,225人を解析対象とした。コロナによる世帯収入の変化別に3群(減少,変化なし,増加)に分け,対象者特性,食行動の変化等についてクロス集計を行った。また,世帯収入の変化を独立変数,食行動の変化,食物へのアクセスの課題,食情報のニーズを従属変数とし,属性を調整した多重ロジスティック回帰分析を行い,減少群の特徴を把握した。さらに,世帯収入の変化にコロナ前の経済的な暮らし向きを加えた6群に分けて,変化なし群/ゆとりありを参照群として同様に解析を行った。

結果 減少群は34.6%,変化なし群は63.9%,増加群は1.6%であった。減少群はパート・アルバイト,自営業の者が多く,緊急事態宣言期間中に休職していた者が多かった。属性を調整後,減少群は変化なし群に比べて,外食頻度は「減った」,調理頻度,中食頻度,子どもとの共食頻度は「増えた」オッズ比が有意に高かった。コロナ前の経済的な暮らし向きにかかわらず,減少群の全てで,欠品による入手制限,価格が高いことによる入手制限,店内混雑による買い物の不自由が「よくあった」オッズ比が変化なし群/ゆとりありに比べ有意に高かった。また,減少群/ゆとりなしは変化なし群/ゆとりありに比べ,食費の節約方法等を必要としていた。

結論 コロナ禍で世帯収入が減少した者は,緊急事態宣言期間中に食物へのアクセスに課題を感じていた者が多く,食情報ではとくに食費の節約方法のニーズが高かった。また,減少群は変化なし群に比べて外食頻度が減少した一方で,調理頻度,中食頻度の増加がみられた。こうした食行動の変化により,食物摂取状況が望ましい方向と望ましくない方向のどちらに変化したか,さらなる検討が必要である。

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