日本公衆衛生雑誌
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入院治療を終えた結核患者受入れに対して高齢者施設職員が抱く不安の関連要因
和田 ありさ樺山 舞向井 咲乃高渕 紗矢香加藤 弘子西住 智子神出 計谷掛 千里
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論文ID: 21-085

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抄録

目的 結核患者は感染性の消失を基準に退院するが,退院後高齢者施設への受入れを拒否される場合が少なくない現状にある。これまで施設職員の不安に焦点を当てた研究はない。そこで,入院治療を終えた結核患者受入れに対して高齢者施設職員が抱く不安の関連要因を明らかにすることを目的とした。

方法 対象は大阪府茨木保健所管内の高齢者施設74施設のうち了承の得られた70施設(通所型のみを除く)の全職員3,213人である。施設長宛てに職員人数分の無記名自記式質問紙を郵送した。調査票は各施設において個々の方法で職員に配布,回収された。施設ごとにまとめられた調査票は,保健所保健師が直接施設を訪問して回収した。調査内容は入院治療を終えた結核患者を受入れる状況を想定した場合に抱く不安感・抵抗感・困難感(以下,受入れ不安)や年齢,性別,職種,勤務年数,結核患者に関する経験,結核の知識等である。受入れ不安の有無と各項目との関連について検討した。

結果 1,950通が回収され,回収率60.7%であった。そのうち分析に用いる項目に欠損がない1,290人を分析対象とした。受入れ不安についてありと回答した者は987人(76.5%)であった。受入れ不安ありが有意に多かった項目は職種(介護士・ヘルパー),結核患者に関する経験がない者であった。また退院後の結核患者の感染力や対応,感染後発病する可能性に関する知識を問う質問に誤答した者においても受入れ不安ありが有意に多く認められた。

結論 本研究より,入院治療を終えた結核患者の高齢者施設への受入れに対して高齢者施設職員が抱く不安の関連要因が明らかになった。本研究で得られた結果をもとに高齢者施設職員がより不安なく退院後の結核患者を受入れ,対象者が円滑に元の生活へ移行できる環境を整備していく必要がある。

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