日本公衆衛生雑誌
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新型コロナウイルス感染症流行下の第1回緊急事態宣言前後の第2層生活支援コーディネーター業務の実態
杉浦 圭子野中 久美子村山 幸子藤原 佳典村山 洋史
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論文ID: 21-152

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抄録

目的 新型コロナウイルス感染症流行により2020年4月~5月の1回目緊急事態宣言は,ロックダウンに近い内容であった。本研究では,緊急事態宣言中および緊急事態宣言解除後(以下,活動再開後とする)の第2層生活支援コーディネーターの住民支援活動の状況について調査を通じて把握し,さらに行政や所属先からの業務に対する指示の有無は緊急事態宣言中や活動再開後の生活支援コーディネーターの活動にどのように影響をしたのかを明らかにすることを目的とした。

方法 東京都特別区内の第2層生活支援コーディネーター279人に2020年10月に自記式質問紙を配布,181件回収した。調査項目は基本属性,緊急事態宣言前後の感染拡大前と活動再開後,緊急事態宣言中のコーディネーターの活動内容とその頻度を尋ね,加えて緊急事態宣言中と活動再開後の行政や所属先から指示の有無も尋ね,自由記載にてその内容を確認した。解析は感染拡大前と活動再開後の活動頻度との比較と行政や所属先からの指示の有無で緊急事態宣言中と活動再開時の活動頻度を比較した。

活動内容 感染拡大前と活動再開後の比較では【社会資源の把握と関係者への情報提供】に含まれる担当地区の地域診断表の作成・改訂,情報誌やリーフレットなどの作成や配布等は活動再開後に頻度が高くなっていたが,多世代の担い手養成やサービス開発,地域関係者のネットワーク化等は前後で変化はみられなかった。緊急事態宣言中に活動頻度が高かったのは所属機関業務であり,地域住民への訪問や声掛けは3.4%だった。緊急事態宣言中に行政や所属先から91.1%指示があり,指示がある方が全般的に活動頻度が高まっていた。活動再開後の指示は76.5%だったが,指示がある方が個別面談や訪問による住民のニーズ把握,サービスとのマッチングおよび活動団体の再開支援等の活動頻度が高まっていた。

結論 活動再開後には社会資源の把握と関係者への情報提供が優先的に行われていた。緊急事態宣言中は地域住民への訪問,声掛けはほぼ実施されていなかった。緊急事態宣言中,活動再開後は指示がある方が活動の頻度が高くなり,とくに活動再開後は指示がある方が,住民に働きかける活動頻度が高くなっていた。新たな感染症の急拡大時は現場に混乱が生じる可能性が高く,具体的な指示があることは生活支援コーディネーターの活動内容に影響することが示唆された。

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