日本公衆衛生雑誌
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地域住民の成人歯科健診における歯周ポケット検査と糖尿病発症の関連性:LIFE Study
谷 直道竹内 研時福田 治久
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論文ID: 22-038

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抄録

目的 近年,糖尿病と歯周病には双方向の関連性があることが多数報告されている。しかしながら,歯周ポケットの深さと糖尿病の新規発症に関する縦断的な関連性についてはさらなる議論の余地がある。従って,本研究は地域住民における成人歯科健診データを用いて,歯周ポケットの深さと糖尿病の新規発症の関連性を検証することを目的とした。

方法 本研究は,東京都某区で2016年4月から2019年3月までに成人歯科健診を受診した20歳以上の成人5,163人(57.4±13.9歳,女性66.3%)を対象として,歯科健診の歯周ポケットコードを用いて歯周ポケット健全群,4~5 mm群,6 mm以上群の3群に分類し2020年3月末日まで追跡を行った。さらに同区の国民健康保険および後期高齢者医療保険の医科レセプトデータ傷病名から,疑い病名を除く糖尿病のICD10コードを抽出し,歯科健診の受診日以降に発症した者を糖尿病ありと定義してアウトカムに用いた。糖尿病発症率の比較にはログランク検定及びCox比例ハザード回帰分析を用いた生存時間分析と感度分析を行った。

結果 ログランク検定の結果,3群間の糖尿病累積発症率は有意に異なっていた(P<0.01)。また,性別,年齢,喫煙習慣,現在歯数,口腔清掃状態を調整したCox比例ハザード回帰分析の結果,歯周ポケット健全群に対する6 mm以上群の調整ハザード比(95%信頼区間)は1.44(1.04-2.00)倍の有意な関連性が認められた。さらに40歳以上を対象とした感度分析の調整ハザード比(95%信頼区間)は歯周ポケット健全群に対して6 mm以上群が1.55(1.11-2.16)倍,40歳以上の男性では1.72(1.04-2.85)倍の有意な関連性を認めた。しかし,40歳以上の女性には有意な関連性は認められなかった(1.39[0.89-2.18])。

結論 本研究の結果,地域住民において歯周ポケットの深さと糖尿病の発症に関する縦断的な関連性が示唆された。特に,40歳以上の男性においてその関連性が顕著であったことから,40歳未満の若年層とりわけ若い男性に対して適切な歯科保健指導を実践し口腔状態を良好に保つことは口腔衛生の観点のみならず,将来的な糖尿病予防の観点からも重要であると考えられる。

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