日本公衆衛生雑誌
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新型コロナウイルス感染症下における県立大学と広域自治体の連携事例:神奈川県EBPMプロジェクトの成果と課題
江頭 勇紀渡邊 亮吉田 穂波鄭 雄一西海 昇Byung-Kwang YOO
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論文ID: 22-039

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抄録

目的 COVID-19の感染流行に伴うまん延防止措置法等の適用に際し,都道府県は科学的根拠に基づいた政策立案を求められたが,国の支援と都道府県の政策需要の乖離が課題であった。そのため,神奈川県立保健福祉大学と神奈川県庁は,共同でEBPM(Evidence Based Policy Making)プロジェクトを立ち上げ,COVID-19感染予測モデルを開発し,政策判断へ活用した。そこで,本事例の成果および課題を検討し,今後の公衆衛生行政への示唆を提示する。

方法 Google社が開発した新型コロナウイルス感染者予測モデル『COVID-19感染予測(日本版)』(Google AI)の推計と公開データを組み合わせた「簡易モデル」,二次医療圏の日別データを使用した「主要モデル」を開発した。主要モデルの開発では,神奈川県庁内で散逸したデータを統合データプラットフォームに格納し,二次医療圏ごとに療養者,入院者,重症者を予測した。予測は,パネルデータ推計にGoogle AIの推計を外挿することで,新規感染者数のピーク値を反映させた。

活動内容 約50種類のデータを統合データプラットフォームに格納し,神奈川県立保健福祉大学の学術チームによる,データの質の評価後,使用データを選定した。推計結果は,平均絶対パーセント誤差(MAPE),平均二乗誤差の平方根(RMSE),平均二乗対数誤差(RMSLE)により評価した。主要モデルで最も精度が高かったのは,2021年9月5日を基準日としたモデルであった。

結論 統合データプラットフォームを用いて二次医療圏の日別データを用いることで,高い精度で予測できたため,政策判断の際に活用された。官学連携の際,専門家とともに,行政側の意思決定プロセスに精通した者をアカデミア側に参画させることにより,円滑な連携が行えることがわかった。一方,諸外国と比較し,本邦では,公開データの粒度の粗さ,限定された研究主体,継続的な予測モデルの開発が課題であることが明らかとなった。

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