日本公衆衛生雑誌
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山形県における時空間三次元地図を用いた新型コロナウイルス感染症流行可視化の取り組み
瀬戸 順次鈴木 恵美子山田 敬子石川 仁加藤 裕一加藤 丈夫山下 英俊阿彦 忠之水田 克巳中谷 友樹
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論文ID: 22-072

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抄録

目的 感染症の流行状況を的確に示すためには,時・場所・人の3つの情報の要約が求められる。本報告では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が山形県において「いつ・どこで・どのように」広がっているのかを可視化したCOVID-19時空間三次元マップ(時空間マップ)を用いて実施した公衆衛生活動の概要を紹介することを目的とした。

方法 山形県および山形市(中核市)のプレスリリース情報を基に感染者の疫学情報をリスト化し,無料統計ソフトを用いて時空間マップ(自由に回転,拡大・縮小が可能な3次元グラフィクスを含むhtmlファイル)を作成した。時空間マップの底面には,山形県地図を配置した。各感染者は,XY平面の居住地市町村(代表点から規定範囲でランダムに配置)とZ軸の発病日(推定を含む)の交点にプロットした。また,色分けにより,感染者の年齢群,感染経路を示した。さらに,県外との疫学的関連性を有する感染者には,都道府県名等を挿入した。完成した時空間マップは,山形県衛生研究所ホームページ上で公開し,随時更新した。

活動内容 2020年8月に時空間マップの公開を開始し,以降,山形県で経験した第六波までの流行状況を公開した。その中で確認された,第一波(2020年3~5月)から第五波(2021年7~9月)までに共通していた流行の特徴をまとめ,ホームページ上に掲載した。あわせて,その特徴を踏まえた感染対策(山形県外での流行と人の流れの増加の把握,飲食店クラスターの発生抑止,および家庭内感染の予防)を地域住民に提言した。2022年1月以降の第六波では,10歳未満,10代,そして子育て世代の30代の感染者が増加し,保育施設・小学校におけるクラスターも増えていたことから,これら施設においてクラスターが発生した際の家庭内感染の予防徹底を呼びかけた。

結論 時・場所・人の情報を含むCOVID-19流行状況をまとめた図を作成・公開する中で得られた気づきを基に,地域住民に対して具体的な感染対策を提言することができた。本報告は,自治体が公表している感染者情報を用いた新たな公衆衛生活動の方策を示した一例と考えられる。

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