日本公衆衛生雑誌
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外国人技能実習生の健康:来日から1年間の質的縦断的研究
相田 華絵森 淑江辻村 弘美佐藤 由美
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論文ID: 22-091

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抄録

目的 本研究は,来日後およそ1年間の技能実習生の健康状態と,関連する要素の経時的変化を質的に分析し,技能実習生が健康に過ごすために必要な支援を検討することを目的とした。

方法 来日後4か月以内の技能実習生16人を対象に,身体計測,メンタルヘルスの状況の測定,傷病の経験,自覚症状,主観的健康感,技能実習や生活に関する半構造化面接および写真を用いた食事内容の調査を3か月に一度,合計4回行った。入手可能な場合は健康診断結果を確認した。データは国際生活機能分類(ICF)の6要素に分類した後,質的データはフレームワーク法を用いた質的縦断的分析から健康に関連する要素を帰納的に抽出した。

結果 技能実習生が経験した傷病,自覚症状および健康に関連する要素の種類や時期は対象者により異なっていた。各調査回の56.3%以上にストレスや困っている事等があり,そのうち44.4%以上にうつ・不安の可能性があった。介護や製造業等重労働を伴う対象者は,来日初期の調査前半に筋骨格系の不調があった。健診結果は日本語で通知され,内容の理解が不十分な例があった。健康に関連する要素として,《睡眠の状況》,《自立の喜びと抱える不安》,《活力の低下と疲労感》,《実習業務の遂行》,《コミュニケーション能力と日本語学習の取り組み》,《健康管理への取り組み》,《日本の生活への適応》,《余暇活動と日本人との交流》,《宗教活動》,《技能実習環境》,《住環境》,《友人・家族・職場等からの支援》,《自然環境・経済動向》,《節約志向の生活》,《来日の動機と1年後の自己評価》の15カテゴリが抽出された。

結論 来日後およそ1年間,技能実習生はストレス,筋骨格系の不調,うつ・不安がある可能性等様々な身体的および精神的症状を呈していた。技能実習生が健康に過ごすためには,健康に関連する要素の変化に合わせ,ストレスに関連する否定的側面を早期に取り除き,肯定的側面を維持・促進することが重要である。加えて,技能実習生のヘルスリテラシーを高めるための運動施設・医療機関に関する情報提供,多言語に対応した健診実施体制の整備,技能実習生を取り巻く関係組織との連携や利用頻度の高いコミュニケーション手段の利用等による情報提供方法の改善が有用と考えられる。また,地域協議会への保健医療職の参加が求められる。

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