日本公衆衛生雑誌
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都市在住高齢者の社会経済的地位と口腔健康を媒介する心理社会的要因
柳沢 志津子 杉澤 秀博原田 謙杉原 陽子
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論文ID: 22-100

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抄録

目的 本研究は,都市部に居住する高齢者において,社会経済的地位と口腔健康との関連のメカニズムについて,心理および社会的要因の媒介効果に着目して検証し,口腔健康の階層間格差への対応に資する知見を得ることを目的とした。

方法 東京都に位置する自治体で住民の社会経済階層が高い区と低い区を選択し,それぞれの自治体に居住する65歳以上の住民1,000人ずつの計2,000人を住民基本台帳から二段無作為抽出し,訪問面接調査を実施した。分析対象は,回答が得られた739人とした。分析項目は,口腔健康に主観的口腔健康感,残存歯数,咀嚼能力の3項目の合計点数を用いた。社会経済的地位は,教育年数と年収とした。媒介要因の候補は,社会生態学モデルを用いて,自尊感情,うつ症状,社会的支援とした。分析は多重媒介分析を行った。

結果 心理社会的要因のうち,個別の要因については有意な媒介効果を確認できなかったものの,心理社会的要因全体では年収と口腔健康の媒介要因として有意な効果がみられた。心理社会的要因全体の媒介効果は,教育年数と口腔健康との間では有意ではなかった。

結論 低所得者の口腔健康が悪い理由の一部に心理社会的要因が関与しており,ライフステージごとに実施される予防活動と心理社会的リスク要因全体を軽減する取り組みを組み合わせることで,社会経済的地位による口腔健康の格差を解消できる可能性が示唆された。

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