日本公衆衛生雑誌
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介護老人保健施設の規模による高年齢介護助手の導入実態と課題
相良 友哉高瀬 麻以杉浦 圭子中本 五鈴馬 盼盼六藤 陽子東 憲太郎藤原 佳典村山 洋史
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論文ID: 23-052

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抄録

目的 介護施設が地域の高齢者を介護助手として雇用し,介護職員の補助的で非専門的な周辺業務に従事してもらう事例が散見されるが,施設の規模により,雇用のニーズや雇用後のサポート体制に差がある可能性がある。そこで本研究は,介護老人保健施設における高年齢介護助手の雇用実態を明らかにすることを目的とした。

方法 全国老人保健施設協会の会員3,591施設に対し,まずFAX調査で高年齢介護助手の導入実態を尋ね,その後,より詳細な情報を収集するため質問紙調査を行った。FAX調査では2,170施設から,質問紙調査では1,261施設から回答を得た。調査では,60歳以上の介護助手を高年齢介護助手と定義した。対象施設は,入所定員により99人以下の「小・中規模施設」と100人以上の「大規模施設」に分類し,カイ二乗検定によって雇用理由や課題,教育体制,雇用継続のための工夫を比較した。

結果 FAX調査の結果,全国の高年齢介護助手の導入割合は31.7%であった。質問紙調査では,687施設が高年齢介護助手を現在雇用していると回答し,これらを分析に含めた。大規模施設の方が小・中規模施設より高年齢介護助手の雇用人数が多かった。小・中規模施設は大規模施設よりも高年齢介護助手に対する決まった教育体制がなく(小・中規模施設30.0%,大規模施設21.6%;P=0.014),家庭の事情等で仕事への影響が出やすい(小・中規模施設15.7%,大規模施設10.2%;P=0.033)と感じている傾向があった。他方,大規模施設は小・中規模施設よりも,介護事故のリスク減少を雇用目的とする施設が多く(小・中規模施設19.8%,大規模施設26.3%;P=0.046),継続雇用に向けた工夫として,定期的な面談等の心理的サポートをしている傾向があった(小・中規模施設24.1%,大規模施設37.3%;P<0.001)。

結論 高年齢介護助手の雇用人数は大規模施設の方が多い傾向であった。小・中規模の施設では大規模施設ほど面談等に定期的な心理的サポートが行われておらず,体系的な研修システムも構築されていなかった。高年齢介護助手という就労形態がより広まるためには,小・中規模の施設における高年齢介護助手への十分なサポート体制の整備が重要と考えられた。

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