日本公衆衛生雑誌
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高齢者が感じる生活支援の必要性と住民との関係性:農村部における生活支援未利用者への横断調査
齋藤 尚子高瀬 麻以田口 敦子村山 洋史
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論文ID: 23-078

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抄録

目的 近年,互助を活用した生活支援体制の構築が重視されている。本研究では,地方において生活支援を利用していない高齢者を対象に,生活支援の必要性と住民との関係性との関連を検討することを目的とした。なお,本研究では生活支援を,「高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるように,日常生活を送る上での困りごとを支援すること」と操作的に定義した。

方法 新潟県十日町市下条地区に居住する65歳以上の者のうち,要介護3以上の要介護認定を受けている者を除いた1,033人全員を対象に,2018年10月に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性,健康状態,住民との関係性,生活支援33項目に対して高齢者自身が感じる必要性とした。

結果 802人(回収率77.6%)から回答が得られ,このうち生活支援をすでに利用している者や長期入院中の者を除いた653人を分析した。因子分析の結果,生活支援33項目は4因子に分かれ,支援の必要性を感じる者の割合が多い順に「一時的な課題やトラブル」53.4%,「イベントや集まりへの参加」38.0%,「日常的な家事」31.7%,「日常生活の些細なこと」27.7%となった。生活支援の必要性に関連する住民との関係性を明らかにするためにロジスティック回帰分析を行ったところ,「一時的な課題やトラブル」の必要性には,住民への信頼感が低いこと,生活支援意向があるが支援を実施していないこと,生活支援意向があり支援を実施していることが関連していた。「イベントや集まりへの参加」の必要性には,生活支援意向があるが支援を実施していないこと,生活支援意向があり生活支援を実施していること,世間体を気にすることが関連していた。「日常的な家事」の必要性には,住民への信頼感が低いこと,生活支援意向があり支援を実施していることが関連していた。「日常生活の些細なこと」の必要性には,生活支援意向があり支援を実施していることが関連していた。

結論 生活支援の必要性には,住民との関係性が関連していた。地域における生活支援体制の推進には,高齢者と住民との関係性を視野に入れた検討が必要である。

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