論文ID: 24-017
目的 「過去からの体重増加と肥満の有無の組み合わせ」と,糖尿病との関連について検討した報告は少ない。そこで,「20歳からの体重増加10 kg以上」の有無と肥満の有無の組み合わせが糖尿病の新規発症に与える影響を縦断的に検証した。
方法 大阪府羽曳野市の国民健康保険加入者で2013年度の特定健診受診者8,704人をベースラインとして設定し,当初から糖尿病であった者,追跡不能,その他欠損値がある者を除外した5,708人を解析対象とした。厚生労働省の標準的な質問票による20歳からの体重10 kg以上の増加の有無と,BMI 25 kg/m2以上か未満かを用いて,「体重増加無し・非肥満」群,「体重増加無し・肥満」群,「体重増加有り・非肥満」群,「体重増加有り・肥満」群の4群に分類し,糖尿病の新規発症リスクをCoxの比例ハザードモデルを用いて検討した。
結果 平均年齢は64.3±7.9歳,平均追跡年数3.14±1.13年間の糖尿病の新規発症は男性126人(6.0%),女性は133人(3.7%)であった。「体重増加無し・非肥満」群を参照群とした糖尿病新規発症ハザード比(95%信頼区間[CI])は,着目群「体重増加有り・非肥満」群:1.77(95% CI:1.26–2.49)と「体重増加有り・肥満」群:2.76(95% CI:2.05–3.72)が有意に高かった。男女別では,男性は「体重増加有り・肥満」群:2.06(95% CI:1.34–3.18)であった。一方,女性では「体重増加有り・肥満」群:3.68(95% CI:2.44–5.53)に加えて,「体重増加有り・非肥満」群:2.19(95% CI:1.35–3.55)でもハザード比が高かった。
結論 非肥満者にとって体重増加は糖尿病発症のリスクであることが示された。さらに女性でその傾向が強く見られ,BMI 25 kg/m2未満でも,20歳から10 kg以上の体重増加がある場合は,糖尿病の新規発症のリスクが高かった。これに該当する者は,特定保健指導の対象外であっても,生活習慣改善指導などの対応が必要であることが示唆された。