論文ID: 24-057
座位行動は座位および臥位におけるエネルギー消費量が1.5 METs以下の覚醒行動であり,近年,座位行動とがん,循環器疾患,死亡といった健康アウトカムの関連が数多く報告されている。本総説は,日本人を対象とした座位行動の評価方法を概説するとともに,これまでに報告されている座位行動と健康アウトカムとの関連について整理することを目的としたナラティブレビューである。加えて,ガイドラインを踏まえて座位行動研究の今後を展望する。
座位行動の評価では,質問紙を用いる方法と加速度計等の機器を用いる方法に大別される。主観的な評価方法である質問紙法は妥当性が高くないといった限界がある一方で,低コストで利用でき,身体活動の目的や場面といった内容について情報収集できる利点がある。一方,客観的な評価方法として用いられる加速度計法は,機器が高価であるものの,座位の継続時間や中断(Break)回数等の詳細な情報が得られる利点がある。座位行動が死亡,循環器疾患,がんのリスク因子であることや,がん種ごとに座位行動との関連についても報告されるようになった。さらに,座位時間と一部の健康アウトカムとの間には用量反応関係があることが明らかにされた。一方で,座位行動と病型別の脳卒中,心血管疾患,整形外科疾患との関連についての報告は十分ではなく,今後の研究が期待される。近年,座位行動に関する研究の増加により,各国のガイドラインで座位行動について言及されるようになった。また,座位行動への介入として,Breakや中高強度の身体活動と置き換えた場合の健康アウトカムとの関連についても報告されつつある。今後は,各疾患の罹患リスクを低減する座位時間のカットオフ値の検討や,座位行動の短縮に対する介入が健康アウトカムへ与える効果を明らかにすることが期待される。