日本公衆衛生雑誌
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「高齢者が仕事として担うフレイル予防教室運営」の普及可能性と課題:埼玉県シルバー人材センター連合本部の取組
野藤 悠新開 省二大須賀 洋祐清野 諭成田 美紀野中 久美子横山 友里萩原 静江藤倉 とし枝藤原 佳典村山 洋史
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論文ID: 24-069

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抄録

目的 埼玉県シルバー人材センター(以降,シルバー)連合本部と東京都健康長寿医療センター研究所は,2018年より,「シルバー会員が仕事として対価を得ながらフレイル予防教室の運営を担う」という事業モデルの普及活動を行ってきた。本活動報告では,その取組内容を報告するとともに,各シルバーの事業実施状況から同モデルの普及可能性を検討し,課題を整理する。

方法 教室の事業化を促すため,埼玉県内全58のシルバーに対し次の取組を行った:①運動・栄養・社会面に働きかける教室プログラム・教材の提供,②フレイル予防サポーター養成研修(3日間×4ブロック/年)の開催,③事業に関する情報交換会の開催(1回/年),④事業実施に関する相談支援。シルバー職員を対象に事業実施状況に関するアンケート調査を行い,普及可能性について,採用,実施,継続の視点で評価した。また,事業実施にあたっての課題・疑問点について,自由記述をコードとして内容の類似性からサブカテゴリーを,サブカテゴリーの類似性からカテゴリーを作成し,課題を類型化した。

活動内容 採用については,全58のシルバーのうち,2018年から5年間で43のシルバー(74.1%)がフレイル予防サポーター養成研修に参加し,34のシルバー(58.6%)が事業実施に至った。実施については,23のシルバー(39.7%)がフレイル予防サポーターへ対価が支払われる形で事業を実施した(事業を実施したシルバーの67.6%)。継続については,2021年までに事業を開始した28のシルバーのうち,21のシルバー(75.0%)が2年以上事業を継続した。実施にあたっての課題は,【事業の始め方に関する課題】【サポーターに関する課題】【新規参入に関する課題】【教室運営に関する課題】に類型化された。

結論 半数以上のシルバーが事業を実施したこと,40%のシルバーが対価を伴う形で実施したこと,事業を実施したシルバーの75%が事業を継続したことから,同モデルの他地域への普及可能性が示された。一方で,実施にあたっては,前述の4つの課題も浮き彫りとなった。同モデルは,地域におけるフレイル予防の担い手が増える,高齢者にとって魅力のある就業機会の創出につながる等の波及効果が期待できる。今後は,浮き彫りとなった課題への対策を検討し,更なる普及を目指す。

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