日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766

この記事には本公開記事があります。本公開記事を参照してください。
引用する場合も本公開記事を引用してください。

介護保険制度の住宅改修における「住宅改修が必要な理由書」を用いた記述的研究:要介護度と理由書作成者の職種による違いの検討
土屋 瑠見子 北村 智美太田 智之服部 真治
著者情報
ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 24-081

この記事には本公開記事があります。
詳細
抄録

目的 介護保険制度で提供される住宅改修サービスにおいて,申請者の特性や詳細な改修目的は十分に報告されていない。本研究では,住宅改修の事前申請制度に基づき保険者に提出される「住宅改修が必要な理由書(以下,住宅改修理由書)」を用い,住宅改修の申請実態を要介護度と理由書作成者の職種の違いを踏まえて記述した。

方法 2015年度に東京都八王子市に申請された住宅改修理由書を用いた。申請状況として,申請者情報(年齢,要介護度,同居家族,主疾患,居住場所に関する情報),住宅改修の申請内容(改善を期待する日常生活動作,期待する効果,改修内容)を抽出した。分析では,申請者の要介護度別および理由書を作成した専門職の職種別(介護支援専門員(居宅介護事業所等),介護支援専門員(地域包括支援センター),社会福祉士,保健師/看護師,福祉住環境コーディネーター,増改築相談員)に人数と割合を示した。

結果 1,652人を分析した。申請者は要介護1(30.2%)が最も多く,入院中に申請している者は要介護度3で最も多かった(33.3%)。住宅改修で改善を期待する日常生活動作は,排泄は要支援1で47.2%,要介護4/5で57.8%と重度要介護者で割合が高く,逆に外出・階段昇降では低かった。入浴は要介護1が58.1%と最も高かった。住宅改修で期待する効果は,どの要介護度でも転倒等の防止・安全の確保,動作の容易性の確保,申請者の精神的負担/不安の軽減が高かった。できないことをできるようにする,介護者の負担軽減は,要介護度が高いほうが該当者が多かった。また職種別の結果では,できないことをできるようにすると回答した割合は,排泄・入浴・外出では介護支援専門員(居宅介護事業所等),階段昇降・屋内移動では社会福祉士で割合が高かった。介護者の負担軽減は,どの日常生活動作でも増改築相談員で割合が高かった。住宅改修内容は,どの要介護度でも手すりの設置が多くを占めていた。

結論 住宅改修の申請内容は,要介護度によって異なっていた。また,住宅改修に期待する効果には理由書作成者の職種による違いがあった。要介護度によって異なるニーズを踏まえた制度設計が必要であるとともに,専門職の連携を促進する上では,各職種の考え方の違いをお互いが理解する場が必要と考える。

著者関連情報
© 2025 日本公衆衛生学会
feedback
Top