日本公衆衛生雑誌
Online ISSN : 2187-8986
Print ISSN : 0546-1766
ISSN-L : 0546-1766
大学と中学校が連携した学校保健活動:デジタル機器の使用と生活習慣についての調査と健康教育
桑原 祐樹 金城 文金 弘子尾﨑 米厚
著者情報
ジャーナル フリー 早期公開

論文ID: 24-102

詳細
抄録

目的 健やか親子21(第2次)は,児童・生徒自らが,心身の健康に関心を持ち,より良い将来を生きるため,健康の維持・向上に取り組めるよう,多分野の協働による健康教育の推進と次世代の健康を支える社会の実現を目標の一つとしている。本報告は,大学の社会医学講座が地域の学校や組織と連携して行った学校保健活動の取り組みの概要と中学校でのアンケート調査や健康教育活動を通して得た知見を示すことにより,他地域や団体が類似の活動を行う際の参考となることを目的とした。

方法 島根県松江市A町の中学校を対象とした活動が中心である。A町では1991年に小児生活習慣病対策事業を立ち上げ,市町村合併による事業終了後も特色ある地域の学校保健委員会活動を行ってきた。鳥取大学医学部社会医学講座環境予防医学分野は当初からA町の学校保健活動に参加しており,社会医学実習を行う医学生をA町の小中学校に受け入れてもらっている。活動について検討する内容は,(1)2022年度のA中学校全校生徒を対象にした生活習慣,デジタル機器使用,心の健康(Patient Health Questionnaire-9)を含めたアンケート調査の集計結果,(2)社会医学実習の活動から得られた中学生,学校保健スタッフおよび大学生からの感想のまとめとした。

活動内容 A中学校では医学生による50分間の保健教室を企画・実施した。医学生はまず,授業計画にむけて中学生や学校保健スタッフへのインタビューとアンケートをもとに健康課題を整理した。その上で心の健康とも関連の見られる睡眠やデジタル機器の過剰使用と好ましい生活習慣作りの啓発をテーマにした教材や授業内容を作成した。当日は2年生の各クラスにわかれて授業を自ら実施した。A中学校の活動を通して,A町学校保健委員会に関わるのみならず,思春期の暮らしや健康に対して同様の問題意識を持つ松江市教育委員会や青少年育成協議会とつながり,一緒に活動することが出来た。

結論 健康教育を受講した生徒や,学校保健スタッフから得られた意見から,ピア・エデュケーションの教育技法を用いてデジタル機器の節度ある使用と好ましい生活習慣について啓発することが出来た。今後の活動では,地域の資源を最大限活用出来るよう関係者をつなぎ,思春期世代の心身の健康づくり活動の展開が望まれる。そのためには,活動の効果を評価するとともに,行政と連携しながら横展開しやすい仕組みを構築する必要がある。

著者関連情報
© 2025 日本公衆衛生学会
前の記事 次の記事
feedback
Top