日本公衆衛生雑誌
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屋内ラドン対策に関する提言:建築物衛生と疾病予防の観点から
山口 一郎 東 賢一後藤 恭一小林 澄貴道川 武紘佐藤 祐子島 正之
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論文ID: 24-117

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抄録

はじめに 私たちが生活する環境には自然放射線がある。このうち,吸入により被ばくする放射性物質としてラドンがある。日本では商業的にラドン温泉として利用されている。

ラドンの吸入によって肺がんを引き起こす証拠は疫学研究でも示されている。海外では公衆衛生の課題として対策が講じられている。日本では,屋内ラドンは規制対象ではなくガイドラインもないが,第159及び160回放射線審議会総会で取り上げられ,公衆衛生の課題であるとの意見があった。本研究の目的は,公衆衛生分野での屋内ラドン対策に関する現状と課題を整理することである。

方法 国際的な状況,国内の状況,これまでの研究の経緯,ラドンのリスク情報や対策法の提示等について2024年1月から11月にかけて公開情報を調査した。

結果 屋内空気,建材,一般消費財,食品,飲料水と言った環境中の自然放射性物質に対する対策が国際的に講じられる中,温泉を大切にする我が国特有の文化的な背景から,対策としては屋内ラドンに関する情報提供にとどまっていた。ただし,国内の米軍基地では国際的な基準に準拠した対応がなされており,高濃度の居住環境で改善が得られていた。

結論 屋内ラドン対策に関する現状と課題が明らかとなった。とくに換気が不十分な地下において相当時間を費やす場合には,ラドン濃度モニタリングの有用性を伝えることの優先度が高いと考えられた。ただし,日本の特性として原子力事故による被害を矮小化させていると誤解されないようにすることやラドン温泉からの放射線ばく露を好む独特な文化的な背景にも配慮が必要である。

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