抄録
従来の自動車シートの評価では,振動伝達率のような客観的な物理量による評価が一般的であり,乗り心地を判断する人間の心理的な主観量への影響が考慮されていなかった.そこで,本研究では,物理量だけでなく心理量を組み入れた評価手法を,自動車シートの乗り心地評価への適用を試みるための実験を行った.具体的には,5 種類の供試シートを簡易なドライビング・シミュレータに搭載し,20 名の実験参加者からの主観的な不快度を得るとともに,コース上にバンプを配置することで設けられた振動ばく露区間の振動加速度を測定した.その結果,振動加速度と不快度を結びつけた尺度構成の結果を用いることにより,シート特性の把握が可能になることを示した.ISO2631-1 に基づいた振動加速度の測定には検討すべき課題が多いことから,ヨーイングやローリングの発生するコースレイアウトへの変更などシート評価の実験継続だけでなく,振動加速度の測定に関する研究を並行して行う必要があることを認識した.