抄録
イットリウムで修飾したUSYを担体として用いたパラジウム-白金触媒は, 軽油の超深度脱硫および芳香族水素化反応において非常に安定かつ高い活性を示すことを見い出した。モデル化合物を用いて活性評価を行った結果, イットリウムの添加により脱硫活性が5.3倍, 芳香族水素化活性が1.9倍となった。また生成物の分析から, イットリウムの添加により4,6-DMDBTの水素化が促進され, その後に続く脱硫反応が進みやすいこと, およびテトラリンの吸着阻害が弱まることが明らかになった。さらに, 脱硫軽油を用いた評価によって, 本触媒がP = 4.9 MPa,WHSV = 4 h-1,T = 280℃ という比較的低温の条件下でも生成油中の硫黄分を28 wtppmまで減らすことができ, 4,6-DMDBTおよび他の難脱硫性硫黄化合物を効率的に除去できることが明らかになった。これらは, イットリウムの添加によってUSY上の強酸点量が減少し, 分解活性の抑制すなわちコーキングの抑制, さらには窒素被毒の抑制によって高活性および高安定性が発揮できたためである。また, 使用済み触媒のSTEM分析によって, イットリウム添加がPd-Pt粒子の凝集を抑制する効果があることが確認された。本触媒は超深度脱硫と脱芳香族を2段反応によって行う際の2段目の触媒として非常に優れていることを確認した。