抄録
ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)および紫外線吸収剤(UVA)間の相互作用を検討して,UVAがフェノールの1種でありながらなぜHALSと相乗作用を示すのかを明らかにした。UVA存在下におけるアミン型HALSによるクメンヒドロペルオキシド(CHP)のラジカル分解は,自動酸化を誘発するUVAとHALSの拮抗作用である。この作用はUVAの場合,フェノール系酸化防止剤3,5-di-t-butyl-4-hydroxytoluene(BHT)に比べて非常に弱いことが分かった。これは,UVAのプロトン供与性の弱いこと,すなわち分子内水素結合によるものと推定できた。一方,UVAによる光酸化の防止とUVA存在下におけるHALSによるCHPのラジカル分解の初速度との間には良好な関係が見出され,UVAとHALSの強い相乗作用が観察された。結論として,UVAはHALSとの相互作用によってヒドロペルオキシドのラジカル分解を誘発(拮抗作用)する能力がない,またはほとんどなく,またUVAのキノイド化合物が生成したとしてもHALSまたはその誘導体の作用によって新しいUVAに再生(相乗作用)されるために,HALSとの組合せにおいて見かけ上相乗作用を示すことができる。