Journal of the Japan Petroleum Institute
Online ISSN : 1349-273X
Print ISSN : 1346-8804
ISSN-L : 1346-8804
総合論文
フラーレン,カーボンナノチューブ,ナノダイヤモンドの新規で実用的な分離精製法
小松 直樹
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 52 巻 3 号 p. 73-80

詳細
抄録

フラーレン,カーボンナノチューブ,ナノダイヤモンドはナノ炭素化合物と総称され,ナノテクノロジーの代表的な素材として注目されている。これら化合物の物性はその構造と密接な関係にあり,したがってその精緻(せいち)な応用には,単一構造体,あるいはごく限られた構造体の混合物であることが望まれる。しかしながら,ナノ炭素化合物は多くの構造体の混合物として合成されることから,その後工程として精製が必要となってくる。以上の背景から,筆者らのグループでは,ここ約10年間,ナノ炭素化合物の分離精製に取り組んできた。本稿では,フラーレン,カーボンナノチューブ,ナノダイヤモンド,それぞれについて,筆者らのグループで開発された新規な分離手法を紹介する。フラーレンでは,薄い活性炭層を用いたろ過により,大量精製にも適用可能な実用的な手法を見い出した。カーボンナノチューブにおいては,超音波霧化と呼ばれる手法を用い,リング状のカーボンナノチューブを純度高く得ることに成功した。ナノダイヤモンドの分離では,高温高圧法により合成,分離された中心径30 nmのナノダイヤモンドから,遠心分離機を用いることで最小4 nm サイズのナノダイヤモンドを得ることに成功した。以上の分離法は,ろ過,超音波照射,遠心分離という,通常の実験室でよく用いられる基本的な実験手法を用いていることから,上記ナノ炭素化合物の工業生産にも適用可能であると考えられる。

著者関連情報
© 2009 公益社団法人石油学会
次の記事
feedback
Top