2017 年 60 巻 3 号 p. 113-120
チタン酸ナノチューブの固体酸触媒特性を,異なる構造を有したチタン酸化物と比較することで評価した。チタン酸ナノチューブは,スクロール構造を有した材料であり,フリーデル・クラフツアルキル化反応やベックマン転位反応に高い触媒活性を示した。その触媒活性は,同様の結晶構造を有するチタン酸ナノロッドやナノシートよりも優れていることが明らかとなった。チタン酸ナノロッドの方がイオン交換サイトを多く持っているが,ナノロッドのイオン交換サイトは,層間に存在し,表面に露出していない。一方,チタン酸ナノチューブは,ブレンステッド酸とルイス酸の両方の酸点が表面に露出している。さらに,チタン酸ナノチューブは,スクロール構造によるひずみによりチタン酸ナノシートよりも高いブレンステッド酸性を示す。これら表面に露出したブレンステッド酸点とルイス酸点が協奏的に作用することで高い触媒活性を示す。