Journal of the Japan Petroleum Institute
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総合論文 —特集「ゼオライト触媒を用いた低級オレフィン製造(2)」 —
ナフサのクラッキングにおけるゼオライト触媒上でのコーク形成
小松 隆之
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2018 年 61 巻 1 号 p. 28-36

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抄録

アルカンのクラッキングによる低級アルケン生成に伴うコーク形成について,フェリエライトおよびZSM-5に着目して詳細に研究した。細孔径が小さいH-フェリエライトがヘプタンのクラッキングにおいて最も高いアルケン選択性を示し,Ca2+交換するとその選択性と安定性がさらに向上した。Ca2+が8員環細孔をふさぐサイトに位置することにより,フェリエライトが10員環による1次元細孔のみをもつようになる。その結果,2分子反応であるヒドリド移動が抑制され,アルカンやコーク前駆体が形成されにくくなると考えられる。コークが何から形成され,どこに蓄積されるかを明らかにするため,コーク含有量および結晶子径が異なるH-ZSM-5上で,種々のアルカン分子の吸着実験を行った。少量のコーク堆積は,ヘキサン転化率とミクロ孔容積には影響を及ぼさず,2,3-ジメチルブタンの吸着速度を低くした。以上の結果から,コークがH-ZSM-5の外表面のみに堆積すること,細孔内で生成した芳香族分子の一部がコーク前駆体へと変換され,外表面でコークとなり蓄積することを明らかにした。芳香族がコークに変換される割合とH-ZSM-5結晶子の大きさとの相関から,短いチャネル内で生成した芳香族分子は,コーク前駆体へと転化する前に細孔から容易に出られることが明らかとなった。小さな結晶子径をもつH-ZSM-5がナフサからのアルケン生成に対して耐久性をもつ有効な触媒となり得ると結論した。

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