2019 年 62 巻 3 号 p. 87-96
水素エネルギーの社会実装を進めるためには,優れた水素貯蔵法の開発が必要である。水素化リチウムは12.7 wt%という極めて高い重量あたりの水素貯蔵密度を有する材料であるが,水素放出に800 ℃以上もの高温を有することから水素貯蔵物質としての利用が困難であった。水素化リチウムからの水素放出に高温を要する主たる原因は,水素放出時にヒドリド(H−)からリチウムイオン(Li+)に電子を移動させて金属リチウムを生成する過程が極めて熱力学的に不利であることにある。本論文では,水素化リチウムへの添加により金属リチウムの生成を回避して水素放出温度を低温化し,なおかつ水素ガスにより水素を再貯蔵可能な水素貯蔵体を構築するための添加物について物質探索の戦略を述べる。また,これらの戦略の実現例として,有機電子受容体やプロトン供与体として機能する炭素材料や共役系高分子材料等と水素化リチウムの複合体を調製し,得られた複合体の水素放出特性と反応機構を示す。