Journal of the Japan Petroleum Institute
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総合論文
プロピレン製造のための複合型ゼオライトによるライトナフサ留分の接触分解
程島 真哉
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2021 年 64 巻 2 号 p. 37-50

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抄録

千代田化工建設(株)ではライトナフサ留分からプロピレンを効率良く製造するための固定床型接触分解法を開発中であり,ゼオライトと金属酸化物からなる複合体を触媒として用いている。主成分のMFI型ゼオライトはゼオライト骨格内に最適化された割合でFe, Ga, Al元素を含有し,全体として適度な酸強度とアルカンからアルケンへの脱水素能を併せ持つため,従来のZSM-5に比べて芳香族生成を抑制しつつライトナフサ留分から低級オレフィンを高選択的に生成可能である。さらに,機械的強度の向上や反応中の圧力損失の低減等の実用的観点から本ゼオライトをシリカバインダーと成形化した複合触媒を調製した。化学的に不活性なシリカバインダーを用いることで,Fe–Ga–Al-MFIゼオライトの酸性質は複合体中においても維持され,Fe–Ga–Al-MFI/SiO2触媒はライトナフサ留分をプロピレン等の低級オレフィンへと高選択的に変換した。n-ヘキサン接触分解での触媒安定性に関しては,優れた耐コーク性により触媒性能は2000時間を超える長期間に渡り維持され,固定床反応器に十分に適用可能な優れた安定性を持つことが示された。また,本触媒を用いる接触分解法は650 ℃以下の比較的温和な温度域でスチーム希釈なしで進行するため,反応工程でのエネルギー削減効果が大きく,プロセス全体で消費される炭化水素原料量は既存の熱分解法(850 ℃)と比較して約15 %削減可能と評価された。本論文では,開発触媒を用いるライトナフサ留分の接触分解法の優れた特性について,触媒化学および化学プロセス工学的観点から解説する。

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