2021 年 64 巻 2 号 p. 51-66
油田におけるアスファルテン析出リスクに関するケーススタディ4例を通じて,多専門領域横断アプローチによりいかに析出リスク評価を行う上での陥穽を最小化していくかを論証した。一般的なアプローチではアスファルテンリスク評価における致命的要素を見逃してしばしば陥穽に陥るが,これを避けるため,本論文では実験由来の情報をどのように実際の現場で起きている現象に解釈するかを紹介する。アスファルテン析出圧力(AOP)実験計測値で較正したアスファルテン含有流体の状態方程式モデルを用い,アスファルテン析出エンベロープ(APE)をPT相の図上に示し,開発シナリオがAPEに与える影響の感度分析を行った。分析には圧入ガス種類,ガス混合率,気化ガスドライブプロセスのような流体力学,アスファルテン含有量の地域的分布などを感度パラメーターとした。これらの分析を通じ,単一専門分野の視点では見抜くことのできない陥穽ポテンシャルを抽出し以下の洞察を得た。(1)ガス圧入時のアスファルテンリスクはドライガスとすることで相殺傾向を示す,(2)気化ガスドライブによる圧入ガスのエンリッチ化を考慮する必要がある,(3)エンリッチ化ガスあるいはリーンガスの坑井近傍への集積といった流体力学上の経時変化がアスファルテンリスクを変動させる,(4)較正用AOPデータが不足する場合に実験観測に矛盾しない擬似APE推定は有用である,(5)油マイグレーション地質史とアスファルテンリスクの分布傾向には相関がある。