2022 年 65 巻 3 号 p. 88-96
δ-MgCl2は高活性なZiegler-Natta触媒を得るために不可欠な担体である。現代の工業用触媒に含まれるδ-MgCl2は非常に無秩序であるため,粉末X線回折(PXRD)だけではその構造を決定することが困難である。そのため,ナノサイズの板状結晶や一次元の鎖状構造など,いくつかの構造モデルがこれまでに提案されてきた。そこで我々はδ-MgCl2の詳細な構造を明らかにするために,PXRDに加えて,X線全散乱に基づく原子二体分布関数(PDF)とナノ粒子モデルによるシミュレーションを実施した。その結果,現代の高性能触媒におけるδ-MgCl2は,調製プロトコルによらず無秩序に積層されたナノサイズの板状結晶で説明できることを突き止めた。本総論ではδ-MgCl2の構造決定に関する我々の最近の取り組みについて概説する。