2023 年 66 巻 6 号 p. 223-230
アルミナ担持酸化ニッケル触媒によるエタン,プロパン,およびイソブタンの脱水素化では,通塔時間に伴う炭素析出の形成とともに,触媒活性の向上が観察されることが報告されている。この改善挙動はカーボンナノチューブ状析出物上に高分散状態で形成される金属ニッケルに起因されるが,さらに通塔時間を長くすると,カーボンナノチューブ状析出物が通常の炭素析出物によって覆われ,活性が低下する。本稿では,活性が低下したアルミナ担持酸化ニッケルを酸素処理により再生した結果について述べた。 炭素堆積物を除去するために酸素処理を用いると,活性種のシンタリングより,触媒活性成分が低分散化され,活性が低下することが一般に知られている。しかしながら,本触媒系では,酸素処理でシンタリングした低分散の酸化ニッケルが形成されたとしても,再度接触反応に用いると,そこからカーボンナノチューブが形成され,このナノチューブ上に高分散状態で金属ニッケルが形成され,良好な触媒活性が再生されることが期待される。この仮説を証明するために,エタン,プロパン,およびイソブタンの脱水素化を,γ-アルミナに酸化ニッケルを18 %,15 %,および 20 %担持した触媒を用いて検討した。その結果,これら3種類のアルカンの脱水素に対して,本稿で提案した酸素処理による触媒活性の再生が良好に行われることが明らかになった。