Journal of the Japan Petroleum Institute
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66 巻, 6 号
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総合論文
一般論文
  • 山田 晃, 小森 一幸, 羽田 政明
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 6 号 p. 208-216
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    重油から付加価値の高い軽質油へ転換する方策の一つとして水素化脱硫装置におけるマイルドハイドロクラッキング(MHC)運転がある。しかし,MHCは触媒へのコーク堆積量も増加することから,触媒劣化に対応する必要がある。著者らのグループは過去にZnおよびPを添加することで,触媒劣化を抑制できることを見出している。本研究では,添加元素の影響を評価するためにP,Zn,Zn+Pを添加したγ-アルミナ担体を作製し,酸性質,水素活性能力を評価した。また,得られた表面性質と触媒性能を相関付けるためにCo/Mo触媒を調製し,ベンチプラントにて評価した。その結果,Zn+P触媒はP触媒と比較して劣化が抑制されていた。Zn+P担体のブレンステッド酸点低下と水素活性化能力向上により,コークの生成が抑制されていたことによると考えられる。生成油性状に関し,Zn+P触媒では,ナフサ得率の低下を確認した。ブレンステッド酸点の低下による炭素–炭素結合の切断能力の低下が影響している。また,アロマ分も低下しており,水素が効率的に活性化され,原料油への水素付加が促進されたためと考えられる。

  • 杉山 茂, 日和田 有香, 矢原 稜太, 西村 太一, 霜田 直宏
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 6 号 p. 217-222
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    前報では,アルミナ担持パラジウム触媒による 2-クロロプロペン(2-PEN)の接触還元が348 Kで高い活性を示したことを報告した。しかしこの場合,2-クロロプロパン(2-PAN),プロピレンおよびプロパンが非選択的に生成されたので,実際の社会実装を考えると分離プロセス併設が不可欠となっていた。本研究では,アルミナ担持ニッケル触媒が2-PENのプロピレンへの高選択的変換を達成できることを明らかにした。たとえば,473 Kでは,10 %のNiを担持した触媒を用いると,2-PENの転化率が15.0 %,プロピレンの選択率は95.7 %に達した。ただし,プロピレン収率が14.3 %であったため,623 Kで反応を検討した。その結果,2-PENの転化率75.6 %,プロピレンへの選択率78.6 %となり,プロピレン収率が59.4 %となった。最も注目すべき点は,この条件下でプロパンが生成されなかったことである。したがって,本触媒系では,プロパンとプロピレンを分離する必要はない。ニッケルを触媒として用いることで,プロピレンからプロパンへの過度の還元が抑制されると結論付けられた。

  • 杉山 茂, 幸泉 旭彦, 岩城 昂尚, 岩井 大輝, 霜田 直宏, 加藤 裕樹, 二宮 航
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 6 号 p. 223-230
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    アルミナ担持酸化ニッケル触媒によるエタン,プロパン,およびイソブタンの脱水素化では,通塔時間に伴う炭素析出の形成とともに,触媒活性の向上が観察されることが報告されている。この改善挙動はカーボンナノチューブ状析出物上に高分散状態で形成される金属ニッケルに起因されるが,さらに通塔時間を長くすると,カーボンナノチューブ状析出物が通常の炭素析出物によって覆われ,活性が低下する。本稿では,活性が低下したアルミナ担持酸化ニッケルを酸素処理により再生した結果について述べた。 炭素堆積物を除去するために酸素処理を用いると,活性種のシンタリングより,触媒活性成分が低分散化され,活性が低下することが一般に知られている。しかしながら,本触媒系では,酸素処理でシンタリングした低分散の酸化ニッケルが形成されたとしても,再度接触反応に用いると,そこからカーボンナノチューブが形成され,このナノチューブ上に高分散状態で金属ニッケルが形成され,良好な触媒活性が再生されることが期待される。この仮説を証明するために,エタン,プロパン,およびイソブタンの脱水素化を,γ-アルミナに酸化ニッケルを18 %,15 %,および 20 %担持した触媒を用いて検討した。その結果,これら3種類のアルカンの脱水素に対して,本稿で提案した酸素処理による触媒活性の再生が良好に行われることが明らかになった。

  • 麓 恵里, 佐藤 信也, 森本 正人
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 6 号 p. 231-237
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    コールタールや石油残さ等の重質炭化水素は安価な炭素繊維原料であり,平均分子構造解析は,これらの重質炭化水素の平均構造モデルを決定する重要な技術である。モデルの決定には,元素分析,平均分子量,核磁気共鳴(NMR)スペクトルを用いる。しかし,実験室規模の研究ではNMR測定に必要な量の試料を確保できないことがめずらしくない。また,溶媒に不溶な試料が少なくない。そこで,NMRの代替法として,赤外分光(IR)スペクトルを用いた重質炭化水素の平均分子構造パラメーターの推算法を開発した。IRでは1~2 mgのわずかな量の試料や溶媒に不溶な試料を測定できる。炭素芳香族性,芳香族炭素に対する末端メチル基のモル比,メチル基とメチレン基の和に対するメチル基のモル比,ケトンとカルボン酸の酸素含有量等のパラメーターの推算式を,石炭,アスファルテン,モデル化合物等の様々な試料のIRスペクトルや水素/炭素比を用いて決定した。

  • 北條 智裕, 矢部 智宏, 山口 和也
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 6 号 p. 238-245
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー

    CO2水素化による有用化合物への転換において,Fe5C2はC–C結合形成に高活性を有することから,触媒として広く利用されてきた。Fe5C2の形成には酸化鉄をCOや合成ガス(CO+H2)で前処理する必要があり,CO2水素化反応中にFe5C2が効率よく形成される触媒が望ましい。本研究ではCO2水素化反応雰囲気中in situでのFe5C2を効率的かつ選択的な形成を目指し,高い水素活性化能を有するRuを Fe2O3に担持し,添加するアルカリ金属をスクリーニングした。反応後の触媒ではK, Rb, Cs添加Ru/Fe2O3でFe5C2が効率よく形成しており,触媒活性ではRu/Fe2O3と比較してアルカリ金属の添加により炭化水素の生成が大きく抑制された。K–Ru/Fe2O3の詳細なキャラクタリゼーションにより,担持Ruナノ粒子がin situで形成したFe5C2により被覆され,Ruをコア,Fe5C2をシェルとしたコアシェル構造を形成することが明らかとなった。Fe5C2の効率的な形成やRuナノ粒子の被覆には,Ruを介した水素スピルオーバーによる酸化鉄の還元促進とアルカリ金属添加によるCOの解離吸着促進が協奏的に作用したことが要因と考えられる。

  • 今西 佳保, 大須賀 遼太, 村松 淳司, 藪下 瑞帆
    原稿種別: 一般論文
    2023 年 66 巻 6 号 p. 246-253
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    高Al含有非晶質シリカ–アルミナをゼオライト原料に用いることを特徴とする「転写法」により,ハイシリカMFI型ゼオライト骨格中(Si/Alモル比11~13)にAlペアサイトを構築することに成功した。Co2+をプローブに用いたAlペアサイト定量の結果,非晶質シリカ–アルミナを合成ゲルに投入した後に行うエージング処理の時間がAlペアサイト量コントロールにおいて重要であることが分かった。また,イオン交換によって導入したCo2+についてUV-vis分光法を用いて解析した。その結果,転写法により合成したMFI型ゼオライトでは,Co2+は配位子を持たない状態でAlペアサイト上に導入されていること,Alペアサイトの大部分がチャネルの交差点に位置していることが明らかとなった。

レター
  • 刘 可, 清水 研一, 古川 森也
    原稿種別: レター
    2023 年 66 巻 6 号 p. 254-257
    発行日: 2023/11/01
    公開日: 2023/11/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    ベンゼンドライリフォーミングは,ベンゼン1 molに対してCO2 6 molを消費し,H2 3 molとCO 12 molを生成することができるため,CO2利用の観点からはメリットが大きい。本研究では、CeO2に担持したNi3Ga金属間化合物がベンゼンドライリフォーミングに有効な触媒として機能することを見出したので報告する。X線回折およびX線吸収微細構造解析の組み合わせにより, Ni3Ga金属間化合物がナノ粒子として形成されていることを確認した。NiとGaの合金化によりCO2利用率が大幅に向上し,CO2転化率はNi単体触媒の約2倍となった。またGaは触媒活性の向上とコークス生成の抑制に重要な役割を果たしていることが示唆された。

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