CO2水素化による有用化合物への転換において,Fe5C2はC–C結合形成に高活性を有することから,触媒として広く利用されてきた。Fe5C2の形成には酸化鉄をCOや合成ガス(CO+H2)で前処理する必要があり,CO2水素化反応中にFe5C2が効率よく形成される触媒が望ましい。本研究ではCO2水素化反応雰囲気中in situでのFe5C2を効率的かつ選択的な形成を目指し,高い水素活性化能を有するRuを Fe2O3に担持し,添加するアルカリ金属をスクリーニングした。反応後の触媒ではK, Rb, Cs添加Ru/Fe2O3でFe5C2が効率よく形成しており,触媒活性ではRu/Fe2O3と比較してアルカリ金属の添加により炭化水素の生成が大きく抑制された。K–Ru/Fe2O3の詳細なキャラクタリゼーションにより,担持Ruナノ粒子がin situで形成したFe5C2により被覆され,Ruをコア,Fe5C2をシェルとしたコアシェル構造を形成することが明らかとなった。Fe5C2の効率的な形成やRuナノ粒子の被覆には,Ruを介した水素スピルオーバーによる酸化鉄の還元促進とアルカリ金属添加によるCOの解離吸着促進が協奏的に作用したことが要因と考えられる。
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